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夢は何ですか?

リヨン大学併設語学学校 嫌な質問だと思った。
当時私は30代後半、いわゆる駐在員の家族としてフランスに滞在しており、通っていた語学学校の若者達とご飯を食べていた時にそんな話題になった。各人が夢を語り、私の番が回ってきた。
「もうこの年になると人生守りに入るからなぁ。子どもがこのまま無事に成長して欲しいとかいう望みはあるけど、自分の夢なんかないって。」
一同ふーん...と、座がしらけた。
しばらくして、語学学校でも先生がまた同じ質問をした。(勘弁してくれよ)内心そう思ったが、日本語で言ったような内容を仏語にする程の能力も持ち合わせていないし、とりあえず何か単語だけでも発しなければと、苦し紛れに ”guide” と答えた。「観光ガイドか?」先生は追い打ちをかける。再び苦し紛れに “oui...” そんなやり取りがあったことなどその後すっかり忘れていたが、仏語だけは(やめたら終わり)と帰国後も続けた。
あれから10年が経った。
昨年12月、フランスに行った。私にとって10年目の「節目」で、旅の目的は再スタートといったところか。友人たちは口を揃えて「なんでこんな何にもない時に来たの?」と笑いながらも温かく迎えてくれた。友人たちから元気をもらい、懐かしい街並みの中に身を置き、原点に戻れた気がした。
通っていた学校の前に立ってふと思った。地理も歴史も苦手で一般常識にも欠ける自分がガイドになろうとは、それこそ「夢にも」思っていなかったのだが、若者に混じって教室に座っているあの時の自分に「それ、実現するんやで」って耳打ち出来たらいいのになと。そして夢。今なら何と答えるだろう。
「売れっ子スーパーガイドになる」などと大風呂敷を広げたら、「それは無理やで」って10年後の自分に失笑されるかな。

(吉井 美枝)

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