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子育ての経験もプラスに

縁側へ座るお客様

通訳案内業試験にロシア語で合格してから 10 年近くが過ぎようとしています。
私は、フリーランスでガイド業のほかに通訳や翻訳も手掛けています。ロシア語のガイドの需要は決して多くありませんが、それでも、ここ数年、日本企業がロシアのクライアントを招待して行うインセンティブ・ツアー、経済的に豊かになったロシア人の個人旅行など、ガイドとして仕事を依頼される機会は少しずつ増えているように思います。

最近のロシア語圏からのお客様は、東南アジア諸国等、世界各国の旅行経験が豊富な方が多いです。また、インターネットの普及で、来日前に本国で日本についていろいろと調べていらっしゃる方も多いです。私が「ここが有名な銀座です」とひとこと言うと、「あぁ、銀座ね。銀座は昔、銀のお金を作っていたところで…」とインターネットで調べた東京の情報を大方暗記していた方もいらっしゃいました。
けれども、まちがっている情報もありますし、日本人の生活の実態は、インターネットだけでは分かりません。ですから、自分らしい具体的な日常生活の話題を取り入れた、リアルで興味深いガイディングをするよう心がけています。たとえば、仕事の際に小さなアルバムを持ち歩き、それを見せながら、自分や友人の結婚式、祝日や育児についての説明をする、といった工夫もしています。

新幹線内での様子

現在は、子育て中のため、お仕事をお受けする条件は、まず、スケジュールです。子供が急に具合が悪くなっても、仕事に影響の出ないスケジュール作りには、本当に神経を使います。また、家族の援助はもちろん、保育園、病後児保育園、区のファミリーサポート、ベビーシッター等、利用可能なものは全て準備しています。
出産前と比べると、稼働日数は格段に減りました。子供が熱を出してしまい、直前の追い込み準備ができない、思うように下見に行けないということもあります。イライラもしますし、落ち込むこともあります。

それでも、ガイドの仕事は楽しく、少しずつでも続けていきたいですし、子育ての経験を、できるだけプラスにするよう心がけています。日本人の主食、お米の話をする時に「離乳食はお米のおかゆから始めます」と言ったり、名前につける「〜さん」について、「子供は『ゾウさん』『ウサギさん』と言います」と付け加えたりすれば、説明にぐっと奥行きが出るのではないでしょうか。
また、ロシア語圏からのお客様には、「日本人は、子供に対して、5 歳(あるいは 7 歳)になるまでは、絶対に『ダメ』と言わない。だから温和な民族性が養われている。」と信じている人が意外に多いのです。そう言われたときも、私は「そんなことはありません」と、日々の体験をふまえて説明しています。同じようにお子さんを持つお客様とは、お互いの子育てについて意見交換をすることもあります。そんな中で、「子供の 2 歳の誕生日の身長を 2 倍すると、将来の身長が分かる」という少し不思議なロシアの言い伝え(注)を教わったこともあり、子育てという共通の話題を通じて、異文化を学ぶこともできました。

食文化を体験

今はインターネットで観光地等の情報が入手できるので、大変助かります。ロシア語ガイドの仲間の数は限られていますが、JFGの会員になったおかげで、英語をはじめ他の言語の先輩、仲間からの情報を得ることができます。JFGのホームページ、その中でも、組合員ページにある業務研修会レポート、データベースや、JFG会員間のメーリングリストも大いに活用しています。
ガイド試験に合格したばかりのスタートの時期には、雑誌に載っている旅行会社、通訳・翻訳会社に片っ端から電話をし、50通以上履歴書を書いたものですが、今は仕事の幅を広げるより、一つ一つのお仕事を大切にしていこうと思っています。
子育ての時期だからこそ、良い意味でペース・ダウンしよう、仕事の前の緊張感を忘れないようにしよう、と自分に言い聞かせています。

(注) 後日、スポーツの専門家にこの件について聞いたところ、「言い伝え」ではなく、もっと正確なものだそうで、以下のように説明してくれました。ソ連時代、オリンピック選手などの優秀なスポーツ選手の育成に力を入れていて、将来有望な子供を見出そうと、子供の身長、体重、足の大きさなどのデータを集めていました。その結果、「 2 歳児の身長の 2 倍が、大人になった時の身長の目安である」ことが判明したそうです。「身長のことだけがよく取り上げられるけれど、実際は、体重、足の大きさなども関係があるので、必ずしも 2 倍という訳ではないんだけどね。」とのことです。(本文に戻る)

(真木 正昭)

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