日本文化を語るに欠かせない竹。竹・笹は世界では1,250種、日本では600種あまりが知られている。栃木県宇都宮市にある若山農場を訪れ、美しい竹林を歩きながら3代目農場主若山太郎氏にお話を伺った。ご用意いただいた資料や参考文献も用いてレポートする。
若山農場は親子3代80数年にわたり竹と栗のみ栽培。約20ヘクタールの圃場で竹は鑑賞用、筍用に10数種類。4月上旬~5月中旬は筍、9月上旬~10月下旬は栗のシーズン。
周囲に人工物が入らず整然と竹林が続くため映画・TV番組のロケ地としても人気がある。
竹の魅力は、稈(かん、木の幹にあたる部分)まで緑であり色がきれいで一年中緑の上、成長が早く直線美が優れていること。緑陰が得られるし、日本らしい和の演出も可能。
竹の特徴は毎年春に地下茎から芽が出て1~2ヵ月で成長を終えること。1日でマダケ(真竹)は121cm、モウソウチク(孟宗竹)は119cm伸びたという記録がある。
一般に寿命はおおよそ20年。また一斉に開花して一斉に枯れること。花はイネにそっくりで花弁がなく実がつくと枯れる。
マダケでは120年ごとに開花すると言われているが、モウソウチクは67年目に開花した事例が2つあるだけで、現状はまだよくわかっていない。
竹林の手入れは、「番傘をさして歩けるくらいに」竹の密度を保つ。栗のシーズンが終わると総出で余分な竹を切る。切った竹はチップにして竹林に撒く。
竹にはケイ酸が多く、良い筍が出る肥料となる。イネ科のチップは腐りにくく抗菌作用がある。
竹は地下茎でどんどん増えていくイメージが強いが、硬質ゴムを埋めておくと周囲には広がらず庭に入れられる。移植には2~3年目の竹がベスト。60cm~80cmの土層をつけて植える。
竹の地下茎がきれいに切れるようにダイヤモンド歯をつけたチェーンソーで切る。こうすると植えてすぐに定着する。切った後、3日から7日間養生させる。
駐車場へ入ってすぐのスペースに出荷を待つ竹が並ぶ。主な納入先には京都迎賓館、六本木ヒルズをはじめ2016年5月開催の伊勢志摩サミットへも800本納入された。
栽培する竹の中でもヒメアケボノモウソウチクは若山農場の主力竹。背丈が4mと低く、伸びすぎず、管理しやすく、美しい。先代が若山農場で異常開花したモウソウチクから種を採り50年かけて品種改良した。他にキンメイチク(金明竹)は稈に黄色い縦縞が互い違いに入る竹。隈研吾氏が好んで根津美術館などに用いている。
また、キッコウチク(亀甲竹)は稈の下部が交互に片側が膨らみ他方の発育が悪いため節がカメの甲羅のように見える竹。TV番組で水戸黄門が持っている杖はこの竹でできている。
ササは学名をsasaといい日本原産。竹は成長後に筍の皮が落ちるのに対し、成長後も落ちずに残るものをいう。那須、日光、箱根などササが広がる光景は日本ならではのもの。
トリビア:初代が「うちで一番大切なのはミミズだよ。」と言っていた。地下茎がはっている土を道具では耕せない。そこを耕してくれるのだからミミズは大事。
若山氏は「日本の新しい『和』を創り出そう。竹は日本のイメージである。竹の新しい居場所は都心のビルの谷間にある。」と力強く話され、平坦で歩きやすい場内や、すがすがしい空気も相まって外国からのお客様によろこんでいただけると思った。
参考文献 「図説竹工芸―竹から工芸品までー」佐藤庄五郎著 共立出版1974
|