2010年2月16日に訪れたセラミックパークMINOは、産業と文化の複合施設というコンセプトで作られ、
産業の面を担う「オリベスクエア」と、文化面を担う「現代陶芸美術館」から成っている。
2002年に竣工した。設計は磯崎新氏。敷地面積は約17ha。
自然との共生 - アプローチ
この谷に自生する希少植物のシデコブシを傷めず、また周りの里山の景観や尾根のスカイラインを壊さないよう、
建物は大きな谷にすっぽり入ったように、また駐車場は隣の谷に作られ、両者を橋とトンネルで結んでいる。
トンネルの照明には、太陽光発電が使われている。
<岐阜県現代陶芸美術館>
岐阜県現代陶芸美術館は、セラミックパークMINOの施設の一部として設けられている。特に免震構造と展示室デザインに特徴がある。
並進振子免震システム
美術館のメインギャラリー部分には、階上の梁から32本のポールで床を吊り下げた並進振子免震システムが採用されている。
ポールの上下端は360度回転するユニバーサルジョイントで、地震の際には振り子のように揺れ、地震の衝撃を吸収して展示品を守るようになっている。
このシステムがこの規模で適用されるのは世界初との事で、コストパフォーマンスは高い。
サブギャラリーにはこのシステムがついていない為、展示ケース1つ1つに免震装置をつけてある。
展示室
・ホワイトキューブ:真っ白な空間。展示ケースもない(必要な作品にのみ使用)。
・床はフローリングにグレーのオイルステン塗装。
・目立たないよう天井に組み込まれているもの
-空調ダクト:天窓の窓枠の縁に組み込み。
-フック:作品を吊り下げるため。躯体に直接取り付け1トンの荷重にも耐える。
-消火栓:作品保護のため、窒素ガス消火設備。
-発光警報装置:耳の悪い方のため。
-スピーカー、世界最小の監視カメラ
-防犯センサー:動くもの・熱を出すものに反応(閉館後に作動され、侵入者を監視)。
・「消火器」の字も赤ではなくシルバー。「非常口」のマークも床に。地元の消防署と協議して許された。
・展示ケース:ベルギー製の透過性の高いガラスでできている。ガラスが自立していて、4隅に枠がない構造。
・照明のコントロールパネル:展示室ごとに照明を0〜100%まで調節することができる(暗闇で展示する作品もありうるため)。
・窓には調光スクリーン。
・メインギャラリーの一番奥の部屋には、壁一面の大きなガラスの開口部がある。
エレベーターに乗らない大型作品を搬入する場合に備えて設けられている。ガラスは展示作品を損なわないよう99%UVカット。
・メインギャラリーの出口では床に段差がある。
これは地震の際、前述の免震システムによってメインギャラリーの床が揺れた場合、その外側の床とぶつかり合わないため。
<オリベスクエア>
セラミックパークMINOの、美術館を除く部分はオリベスクエアと呼ばれ、
レストラン・ショップ・2つの茶室、ホール・会議室・カスケード広場・作陶館・屋上広場・展望台がある。
・大小2つの茶室は屋外に独立し、設計はやはり磯崎新氏。小間の茶室は大徳寺の密庵(みったん)、
広間の方は同じく忘筌(ぼうせん)茶室に倣って造られている。
カスケード上に浮かぶように見え、懸舟庵(けんしゅうあん)と銘打たれている。
・カスケードの水は普段循環し、鉄砲水などの緊急時には、カスケード下に集中するパイプを通し、
建物地階の調整池に排水される仕組みになっている。
現代建築・美術、最先端技術、伝統工芸、地域産業振興、自然保護への配慮の融合の見事さに、地方産業都市の意気込みを感じる思いがした。
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