ファムトリップの醍醐味

「利根川」 外国人の訪日旅行にも色々な形態がありますが、中でもビジットジャパンキャンペーンの一環として最近増えているものに、ファムトリップがあります。 これは日本の官庁や地方自治体が海外の旅行業者やジャーナリストを招待するものです。 日本の旅行社や地元の観光課の職員がツアーに同行し、また各訪問施設ではスタッフによる案内があります。 同行する通訳案内士は、案内人とツアー客の通訳を行いながらその場所の魅力をお客様にしっかりと伝えます。 既に人気のスポットというより、今後の発展が期待される場所に訪れることも多いので、 私たち通訳案内士にとっても勉強になるツアーです。

マスコミで何かと話題に上ることの多い中国人訪日観光客ですが、2000年に国外への観光旅行が解禁されて以来、 SARSや国際紛争、東日本大震災、また最近では領土問題の影響で一時的に旅行客数が落ち込むことはあったものの、大筋ではその数は増加傾向にあります。 最近ではリピーターも多く、東京・大阪間を5泊程度で移動し京都や富士山などの観光名所を巡る「ゴールデンルート」 と言われる基本ルートや人気の北海道以外の場所に興味を示すお客様も増えてきました。 日本には、まだまだ大きな潜在力を秘めている素晴らしい場所が沢山あるので、各地の情報を中国に向けて発信していくことはとても有意義です。

日本を中国にPRしたいというのは、両国の関係者にとって共通の思いです。 ファムトリップのお客様、即ち中国の旅行社や記者の方々は、ツアー中熱心にメモを取られ、 またカメラマンの方はその魅力を最大限に伝えようと写真やビデオの撮影に休む暇もありません。 例えばレストランに入っても、料理の美味しさをそのまま読者に届けるために写真撮影に没頭され、自分の食事は二の次です。 このように、仕事の一環であるとは言え、日本の素晴らしさを自国に伝えようと真剣に取り組まれる姿を見ていると、 まるで大切な我が子を慈しんでもらったようでとても嬉しくなります。

ファムツアーに同行し、具体的にそのルートを中国人観光客が旅する姿をイメージすると、 旅行者にとって必要な情報は何なのか、また旅行者はその場所や物に何を求めるのか、ということが自ずと見えてきます。 ツアーの企画や旅の情報提供に、こうして通訳案内士として関わることができることに、大きな責任と遣り甲斐を感じます。

「草津温泉」 依然として課題が立ち塞がる二国間関係ですが、そんな時期でも日本を選んで来て下さったお客様に誠心誠意、 真心を尽くすことで、また一人日本ファンが増えたと実感することがあります。 今後もファムトリップやその他のツアーを通じ、一人一人のお客様に楽しい旅の思い出を作っていただくことで、大きな岩を動かす一助となれたらと思います。


(広瀬 由美子)

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