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当世日米教育事情

この10年近く、米国からの教育関係者を連れて日本各地の小学校から大学まで訪問するツアーを担当している。日本側の先生方や保護者との討論や授業参観を通し、日米の教育事情の違いが、まざまざとわかり、とても興味深い。

まず、日本では、少子化で教員の需要が減り、教員志望者が卒業後フルタイムで正規教員に採用される率が非常に低いが、アメリカは、なんと教員不足に悩んでいるのだ。一部の優秀な人を除き教員全体のレベルが低く、給与や雇用条件も悪く、社会的評価も低いので、教員志望者がますます減るという悪循環に陥っているのが現状である。中央集権で全国どこでも均一な教育を受けられる日本に比べ、アメリカでは州や学区によって事情が様々である。「終身雇用ではなく勤務評定による1年契約で夏休みは給与が出ないので私はスーパーでアルバイトしている」などと一人が言うと、「私も」と手をあげる先生が多いので唖然とする。「日本では教員のほとんどが定年まで教職に留まるそうだが何故なのか?」という素朴な質問が出て絶句してしまうこともある。

各教室での給食にも参加する。アメリカでは交代制でカフェテリアで食べることが多いが、生徒達がエプロンをして当番で配膳し、担任教員も同じものを食べることにびっくりしている。その後、生徒による清掃を見学しては、また、ため息。勿論、日本の学生の規律正しさも注目の的である。大阪教育大付属小学校のような悲惨な事件もあったが、まだまだ日本の方が治安も良好で、担任が休み時間ごとに生徒を(監視なしに)教室に放っておいて職員室に戻るという行為が、アメリカ人には信じられないようだ。もし事故でもあったら保護者から訴訟を受けるからである。

多民族性、多宗教、貧富の差などで、州や学区により教育内容が多様化している米国に比べ、均一化の見られる日本も、入試の為の詰め込み教育、1組40名定員制など問題は山ほどある。2002年度からの学習指導要綱改定で「ゆとりある教育」をめざし従来の授業内容の3分の1がカットされ、複数の教科が統合された「総合学習」の時間が大幅に増えたが、その総合学習の有効利用では、どちらかというと持て余し気味の先生も多い。指導要綱も現状に応じ改定を重ねていくであろうが、改悪ではなく「改正」になることを望む。

毎年テーマ性のあるツアーを重ねていると、その分野にますます自分の関心も深まり、視野が広がり大変勉強になる。仕事をしながら色々学べて有難いことだと感謝している。

「いじめ」「ゆとり教育」「不登校」「指導要綱」「トラッキング」「ストリーミング」「アカウンタビリティ」など普通の観光ツアーではあまり出てこないような用語やその背景の勉強も楽しいものだ。いろんな分野の仕事に携わることができれば、それだけ自分の視野も広がり大変な勉強にもなる。何にでも興味を持って積極的に学んでいきたいと思う。

(吉崎 恵子)

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