(京都府知事指定伝統工芸品/京もの指定工芸品)
私は京都をご案内することが多いのですが、金閣寺や伏見稲荷など神社仏閣の観光はもちろんのこと、茶道や和菓子作り、京友禅など様々な体験を希望されるお客様がおられます。そこで今回のエッセイでは、短時間で制作体験が可能な京都の伝統工芸の1つである京七宝を紹介します。
七宝は銀、銅等の金属の上にガラス質の釉薬を750℃前後の温度で焼き付けて作る金属工芸品で、京七宝は安土桃山時代の華やかな文化の中で京都の優れた金工の技術を背景に宮殿や城、神社仏閣を飾る装飾品として発展しました。また、明治時代には並河靖之氏が京都三条に工房を開き、その繊細で完成された作品により七宝を美術工芸品にまで高めました。その後も技術の改良と工夫を繰り返し、現在も制作され続けている伝統工芸品です。
今回は京七宝工芸組合加盟のヒロミ・アート工房東山店にて、ブローチの制作を体験してきました。東大路通りを八坂神社から少し南に下ったところにある町家での体験です。工法はフリット七宝と有線七宝の2種類から選ぶことができますが、私は有線七宝でブローチを制作しました。フリット七宝は銀の土台の上に砕いた釉薬(ガラス)を焼成する技法で、有線七宝は銀の土台の上に細いリボン状の銀線を折り曲げて模様を付けて焼成する伝統的な技法です。ブローチ以外にも、ペンダントや帯留め、根付けなどを作ることもできます。
いくつかのサンプルを見せていただいてデザインを決めた後、以下の工程に従って2時間弱でブローチを制作しました。
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素地:純銀版を形に合わせて切断する。
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下焼き:素地の表裏に釉薬を800℃で焼き付ける。
ここまでは準備していただいてあります。
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植線:純銀のリボン線を曲げて焼き付ける。
指やピンセットを使ってリボン線をデザインに合わせて曲げるのですが、かなり細かな作業です。
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彩色:仕切られた銀線の中に釉薬を色分けして銀線の高さまで盛り上げる。
色を混ぜたりグラデーションをつけたりする際は、濃い色から入れていきます。薄い色を先に塗り、濃い色を重ねていく京友禅とは色の重ね方が逆です。
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焼成:焼成後のへこんだ部分に釉薬を足し、美しい色になるまで4.5.の作業を繰り返す。
窯から出した直後の高温時と冷めた後では色がかなり変わりますので、色の変化を楽しめます。また、焼成すると表面にへこんだ部分ができますので、釉薬を足して色も調整します。
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完成:表面に出た銀線を削り、焼成をして完成。
お店の方に仕上げをしてもらい、さらにもう一度焼成し、ブローチの金具をつけてもらって完成です。
2時間程度で完成品を持ち帰れる体験ですので、日本の思い出としてオリジナルの京七宝のブローチやペンダントの制作はいかがでしょうか?
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