祇園祭と聞いて、多くの方がまず思い浮かべるのは、京都の祇園祭だと思います。
東京の神田祭、大阪の天神祭と並んで日本三大祭りの一つに数えられていますし、
一昨年にはユネスコ無形文化遺産にも登録されました。
ゴールデンウィークが明ける頃になると、四条烏丸から室町、新町あたりの山鉾町からは、
コンチキチンの祇園囃子の練習の鉦(かね)の音が聞こえてくるようになり、梅雨入りする頃には、
町衆もそわそわして仕事も手につかない様子です。
私も縁あって、ハイライトの山鉾巡行の日には、32基ある山鉾の中でも最重量(約12トン)の月鉾を、
エンヤラヤーと毎年必死で曳かせていただいておりますので、祇園祭は個人的にも思い入れの深い祭りです。
でもちょっとお待ちください! 中には「私の地元にも祇園祭があります」と言われる方も多いのではないでしょうか?
ご存じのように祇園祭は八坂神社の神事であり、ご祭神である素戔嗚尊(すさのおのみこと)・
牛頭天王(ごずてんのう)に奉納される祭りですが、実は日本全国に八坂神社の分社が約3,000社、
八坂以外の素戔嗚尊・牛頭天王を祭神とする神社も合わせると約6,000社あり、
それらの神社で行われる祭りの多くに祇園祭という名が冠せられております。
ですので、実際には祇園祭は全国各地に存在していることになります。
その中で、京都の祇園祭と並んで全国的に有名な祇園祭を仕事で外国からのお客様をご案内する機会がありましたので、
京都の祇園祭との相違点、共通点などを見てみたいと思います。
そのもう一つの祇園祭とは、福岡市で7月に行われる祭りです。一般には博多祇園山笠として知られております。
祭りの最中、京都の山鉾に相当する山笠が博多の街を彩ります。
ただ京都と違う点は、博多では、主に鑑賞用の豪華で優雅な「飾り山笠」と、町中を担いで走る「かき山笠」の2種類あることです。
京都でも祇園祭の最中の神幸祭においては、3基の神輿が京都市中心部の繁華街を練り歩きますが、
祭りの最大の見どころは山鉾巡行とされ、8トンから12トンある山鉾をロープにつないで、
大人数でゆっくりと曳いていく様子を見物客は見て楽しみます。
一方、博多山笠の方は約1トンの「かき山笠」を肩に担いで、しかもタイムレースですから全速力で見物客の間を駆け抜けていくのです。
その迫力のため、とても激しく荒々しい感じを最初は受けるのですが、引き込まれるように見ているうちに、
担ぎ手や参加者の熱気に触れて何か清々しい感動すら覚えるようになります。参加者の衣装もとても印象的です。
京都では祭りの参加者は法被に股引(ももひき)といういでたちですが、博多は法被に締め込み(ふんどし、なんと小学生の女の子も)です。
この衣装も祭りの勇壮な面を助長しているように感じます。
掛け声にしても、京都では山鉾始動の際に、「エンヤラヤー」と長めの声で言う場合が多いように思いますが、
博多は「オッショイ」という掛け声を短く激しく繰り返します。
そういった両者の違いについては、写真で見ていただいても容易にお判りいただけるかと思いますが、
では逆に共通点はあるのでしょうか?
私が思う共通点は、ともに地元民が数百年に渡って、誇りを持ち、廃止の危機も乗り越え、
世代から世代へと伝統を引き継いできた点、それに、地域性、県民性、
歴史的背景をそれぞれによく反映した祭りであるという点ではないかと思います。
日本には、春、夏、秋、冬、にそれぞれ異なった趣旨の祭りがあり、祭り好きの人には、一年を通して楽しめるので最高ですね。
また今後も日本各地で新しい祭りに出会うのが楽しみです。
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