2012年2月2日、作庭家・庭園史研究家の重森千氏をお招きし、真冬の浜離宮庭園で実地研修が行われました。
徳川将軍家ゆかりの浜離宮庭園の特徴は、@国の特別名勝に指定された庭園、すなわち庭園の中の「国宝」にあたる
A2つの鴨場がある B広大な埋立地である、と言えます。
大手門から入ると、松の木が植えられた芝生の空間が広がります。
明治時代の外国貴賓接待場「延遼館」跡地で、国賓級の人々を招く場所にしていたため、西洋庭園をイメージしています。
奥へ進むと、石や燈籠、自然を模した(枯れ)流れが配置され、日本庭園の風情です。
さらに南へ進むと中央に中島を配した「汐入の池」があり、水門から海の水を採り入れて、池の水位を調節しています。
そのため、ボラ、マハゼ、マルタウグイなど、海に生息する魚がいます。
池は「海洋風景」を表し、海には昔から風よけの松が植えられてきたことから、ここでも松が使用されています。
岸から池へ張り出した部分は「出島」を表し、池の表面から出ている岩は「岩島」で、海洋の島を表現しています。
ゴツゴツした岩は「荒磯」を表現しています。
庭園には基本的に地元の石が使われますが、浜離宮をはじめ関東では、軽くて面白い形をしており手に入れやすい「墨石(溶岩石)」が多く使われています。
海側の築山が途切れているところから、以前は海が見えていました。海をあからさまに見せず、築山の間から少しずつ見せているところもポイントです。
現在は、池の南側に立ち北側に視線を移すと、汐入の池と中島の御茶屋、2010年末に復元された松の御茶屋、
すぐ背後に貨物ターミナルが再開発された汐留の近代的な高層ビル群が迫っている様子が印象的です。
「汐入の池」の西側と北東に位置する鴨場の周辺は、鴨をおびき寄せるため木をたくさん植え、自然に近い景観を作り上げています。
観賞用の池と鴨場の間に築山を設けることによって、池から鴨場が見えないようになっています。
鴨場の周りに長さ30mの細い堀を多数設け、堀の突き当たりの小覗きから、カタカタと板木を鳴らしながら堀へ餌を落とすと、
おとりの家鴨が野鴨を連れて堀に入り、機を見て土手の陰から叉手網か鷹で捕らえていました。
鴨場を過ぎ、さらに徳川8代将軍吉宗の頃には農業の試験場などに使われ、象も飼われていた北側のお花畑を過ぎて大手門に戻ると、
門の近くに「三百年の松」があります。
その右横の「赤松」は、 幹の表面を竹ぼうきで磨いて幹をつるつるにし、葉の間から赤い幹が見えるように手入れされています。
このような樹木の手入れ方法は、外国からのお客様がよく興味を持たれるトピックです。
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