柔軟な発想を持って

「高尾山の紅葉」 秋の観光シーズンが終わり、慌しかった日々に少し静けさが戻ってきました。 とは言え、世界的経済不況、円高、新型インフルエンザという波にのまれて、 昨年より仕事が増えたという元気な通訳案内士(通称・通訳ガイド)は少なかったように思います。 日々変わる国内外の情勢に大きく影響を受けるのは通訳案内士の業界でも同じことです。 オフシーズンに入っても、私たちをとりまく新たな問題の解決と市場の開拓に向けて日々努力していかねばならないのは言うまでもありません。

現在通訳案内士が有効活用されていない最大の理由として、「通訳案内士の需要と供給のミスマッチ」という声も聞こえてきます。 私たちは、今後この点が改善されるよう真剣に考慮する必要があるのではないかと考えています。 また「通訳案内士に求められる質、役割を考えるにあたって、消費者すなわち外国人旅行者の視点は欠かせない。 語学ができる人がいるからその人を活用しようという供給者側の視点では、観光客の満足度向上は図れない。」という意見も、 ネイティブの無資格ガイドに関してありました。

「茅葺家屋」 JFGでは様々な研修会を通じて、各組合員の自己研鑽を図っています。 各界の専門家を招いての講義、歴史的建造物や文化施設の見学、プレゼンテーションの能力を磨く研修など、枚挙にいとまがありません。 また通訳案内士は、日本と日本文化への造詣を深めることに加えて、外国人旅行者の視点に立ったサービスを十分供給することが必要です。 そうでなければ、再びこの国を訪れてみたいという人達を増やすことはできません。

そこで外国人観光客のニーズとは何か考えてみました。 通訳案内士に関して言えば、日本に関する十分な知識や情報であり、ホスピタリティーであり、気配りであり、 価格も含めた適切なツアーオペレーションでしょう。でも本当にそれだけでいいのでしょうか?この問いは永遠の課題かもしれません。 私たちはこの問いの答えを模索しながら、今後の仕事に取り組むことが必要です。 答えは時代とともに変わっていくものかもしれませんが、通訳案内士は常にこの視点を忘れてはいけないと思います。

通訳案内士の仕事の多くは、旅行代理店や、発注側の企業や団体の作成した旅程に従って遂行されています。 しかし今や、それとは別に自分でツアーを企画・設計し、実行の可能性を探るほどの意欲が必要だと思います。 自作のツアーが現実に催行できるかどうかは各自の努力によるでしょう。軌道にのるまで忍耐力が求められ、時間もかかるでしょう。 しかし外国のお客様に本物を見せたいという熱い思いを持って、 「こんなこともできるのではないか」「私ならこうする」という柔軟な視点から従来のツアーを吟味し、 斬新なアイディアを盛り込んで外部へ発信していくことが、多様化する外国人観光客のニーズに応えることになり、 自らの新しい発見と市場の開拓につながるに違いありません。
「日本画」
通訳案内士各自の豊かな創造力と、これまで築いてきた人脈と、持ち前の行動力をもってすれば、 従来の枠組みを超え、訪日観光客に本当に喜んでもらえるツアー、ユニークなツアーが数多く可能になるでしょう。 JFGの組合員は各自が個人事業主です。柔軟な発想で自己の可能性を広げていきたいものです。


(菅井 悦子)

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