外国人から見た日本のやきものの魅力
Robert Yellin(ロバート・イエリン)氏は日本の禅、美術、文化に心を寄せる兄姉に影響され、1982年に初来日、1984年再来日、日常にアートのある日本に魅了され、日本に引き続き住む事を決意。当時は青山学院大学で英語を教えていた。特に陶器に心を奪われ、Japan Timesに陶器の評を載せた。Websiteも立ち上げ、海外の人々に日本の陶器の素晴らしさを解説。現在京都の銀閣寺近くで「やきものギャラリー」を主宰、海外でも日本のやきもののレクチャーを行う。
・陶磁器においては西洋の美に対する考え方と東洋の美に対する考え方が異なる。西洋は表面がなめらかで絵柄が美しい陶磁器を愛でる。また日本にも伊万里、鍋島、有田、九谷という磁器があり、これらも美しくまさに宝物であるが、自分としては備前焼が最も気に入っている。
ある日、備前焼の茶器をいただいた。それは磁器とは全く違っていたが、その背景を知るにつれ心惹かれていく。 やきものを通して日本の文化、歴史や茶道を学んできた。例えばこの備前焼には左下に石爆ぜ(いしはぜ)があるが、これは意図したものではなく、自然な粘土の性質により造りだされたものである。このように不完全なもの、意図せず偶然生まれたもの、きらびやかではなく侘び寂びが感じられるやきものに深遠な美しさを見いだすのが東洋の美の感覚である。
お茶席で使われる碗は非常に高価なものである。お茶席の碗を通して陶器の歴史、絵柄の意味、自然を大切にする心やその技術を知ることとなった。碗の裏の高台を見れば技術や粘土の特色(つちあじ)が分かり、また長年使っている事で風格や趣が加わり、その良さが分かる。その魅力は論理的に説明することが難しく、それは心そのものである。こういったやきものは年代を経てもずっと使うことができる。季節毎に選んだ茶碗を毎日眺めては心動かされている。
登り窯では火力が強く炎が長い赤松の薪を使用する。彩色のための釉薬(うわぐすり)は使用せず、窯の中で赤松の灰が高温(1260~1300℃位)で溶け、釉薬の役割をする。高温で焼け焦げた色調が出る事があり、他のうつわを藁(わら)をかませて重ねておくことで違った色調が出る事もある。窯出しの際は心躍るが、展示会に出せるものは約10%にすぎない。
海外のお客様が京都に来る時は河合寛次郎記念館や楽美術館にお連れして、また時間があれば大津の佐川美術館にお連れして、日本の崇高なやきものを紹介するといい。日本の陶磁器はその美しさ、豊かさ、創造性から世界で多くの人々に愛されている。伝統は守るべきものだが、時代の要請を鑑みて進化しなくてはならない。京都の若手陶芸家による「走泥社 SODEISHA」の活動は日本における現代陶芸の始まりとなった。彼らは「機能的」な陶器から「彫刻」的陶器へと移行させようとした。そのように伝統を重んじながら現代の要請に応じて変わっていかなければならない。信楽でも伊賀でも現代に合わせて変わっていこうとする陶芸家がいる。現代の陶芸家をできるだけ支援しようと思っている。
(植村 知里)