鳥羽の牡蠣とあさりの養殖
鳥羽市浦村町は全国的に有名な牡蠣の産地で、多くの観光客が牡蠣を求めて訪れる。しかし牡蠣は収穫が11月から4月に限られるため、1年を通して海からの収入を得ようとアサリ養殖が始められた。今回養殖への取り組みで2013年第53回農林水産大臣賞を受賞した浅尾大輔さんからアサリと牡蠣養殖についてお話を伺った。
1.画期的なアサリ養殖
日本でのアサリの収穫は年々減少し、最盛期に比べると2分の1まで落ち込んでいる。原因の一つは海洋汚染で、浜の表面の砂はきれいに見えてもその下の土壌はヘドロ化が進み酸性化している為、海中で浮遊していたアサリの”たね”(卵のようなもの)は地中に潜り成長する過程で土の中で溶けてしまう。海の酸性度を少しでも減らして海洋汚染を止めようと、年間6000t出る牡蠣の貝殻(アルカリ性)を利用し「ケアシェル」(牡蠣の貝殻を粉砕して作った成人の小指大の丸い粒)を制作し、30cm×50cm大の袋に入れて海に吊るすと、そのあさりの“たね”が袋の中に入り混んできた。それ以降、浅尾さんと「浦村アサリ研究会」はネット数を増やし、最初は1袋40から50個程度の収穫が現在では300から500個収穫し、さらに安定的に供給できるよう取り組んでいる。
2.牡蠣養殖
浦村町では「垂下式養殖」(静かな入り江の海でホタテの貝殻を一定間隔で結わえたロープを筏に吊るし、ホタテの貝殻に牡蠣を定着させて生育する手法)を行っており、総ヒノキの筏は1台が5m×7m大で5台を連結して使い、10~15年で新しいものに取り換える。現在71軒の養殖業者が総数1250台の筏を保有しているが、場所によって収穫量も違う為毎年5、6月小潮の時にくじで筏の場所を決めている。
牡蠣の幼生が定着するホタテの稚貝は宮城県から入手し、ロープ1本7mに24枚のホタテの貝殻を針金でつけ、3本一組にして合計72枚を沈めている。牡蠣は7月中旬からお盆過ぎに産卵し、一斉に産卵すると海が白くなる程である。浦村産の牡蠣は約1年2か月で収穫され、小ぶりである(広島産は2、3年)。牡蠣の天敵は水温の上がりすぎで、これは予防できないが、少しでも牡蠣にとって最適な環境を守っていく為、浅尾さん及び浦村の方達は農林水産に携わる様々な関係者と連携した環境への取り組みを始めている。自然すべてを包括的にとらえて食を守ることがますます求められている。
(橋爪 真理)