京友禅と骨董
午前は京都四条大宮の近くにある友禅美術館古代友禅苑を訪問し、友禅染の研修と型染めの実習を行ないました。反物が完成するまでにはいくつもの工程があり、専門の職人さんが各工程を請け負っていました。見学を通して、着物という芸術品はそれぞれの職人さんの心と技が一つになって作り上げられていることを再認識しました。
午後は新門前町で古美術商を営んでおられる下中氏を講師にお迎えし、商いの仕組み、訪問時のマナーなどを講義していただいた後、門前町界隈の骨董街、および祇園界隈を散策しました。
友禅美術館古代友禅苑
この施設は、人々に京友禅の美と伝統に親しんでもらうことを目的として27年前に設立された。江戸時代後期の友禅染を中心に5000点に及ぶ所蔵品の中から四季折々の着物が展示されており、10年の歳月と現代技術を駆使して復元された江戸時代の小袖も飾られている。
今回の研修ではハンカチの友禅染に挑戦。5種類の図柄の中から好きなものを選ぶ。白地のハンカチの上に図柄を切り抜いた型紙を置き、切り抜き部分に特殊染料(洗っても落ちない)を塗っていく。位置がずれないように、型紙とハンカチを置いた台紙に付いている丸印のポイントをあわせるのがコツ。異なる型紙を順番に置きながら5~6回ほど色付けをすると、全体に美しい彩色が施される。最後に点線で図柄を描いたプラスチック製板に白の染料を塗る。あっという間にくっきりとした輪郭が入り、作品を引き立たせてくれる。手先の器用さに関係なく誰でも失敗せず楽しめるので、外国の方にも充分喜んでいただけそうである。
昼食後、友禅屋敷を訪問した。古代友禅苑から徒歩2~3分のところにある築80年くらいの町家である。各部屋の襖や壁には、伝統的な表装技術を用いた素晴らしい着物や帯が、「誰が袖」(たがそで)や「伏せ籠」(ふせご)をモチーフに貼り付けられており、町家と友禅、双方の保存に大きく貢献している。
骨董とは?
現在、京都の新門前、古門前町合わせて 70~80 軒ほどの古美術商がある。骨董とは主に、稀少価値あるいは美術的価値のある古道具と定義されており、その語源は中国から来たといわれる。しかし、茶道具を扱う店は骨董屋と称されるのを嫌う傾向があるそうだ。神社仏閣の縁日(弘法さん、天神さんなど)で開かれる骨董市を始め、各地でも骨董市が定期的に開かれている(パルスプラザ蚤の市など)。また、最近ではテレビでも骨董が取り上げられるようになり、骨董の世界を紹介する定期刊行物や特集も多く出版されているため、一般の人にも親 しみ易い存在となってきている。骨董を資産価値として集めている人もいれば、趣味の追求で収集して人もいる 。何れにしろ、材質、技術ともに今ではもう作ることの出来ない貴重なものがたくさんある。それらは職人の技が光るいいものであったからこそ、今まで大切に扱われて骨董屋さんの陳列台に並んでいるのだ。骨董の醍醐味 はそういう価値ある本物との出会いであり、日々の暮らしに趣を与えてくれるところにあるのではないだろうか。
骨董屋ってどんな商売?
オークションといえば、業界大手のサザビーズやクリスティーズなどが有名であるが、国内でも多くのオークションがある。カタログを見て一般の人が入札できる公開オークションもあれば、業者間のみのオークションもある。また、インターネットを通じて取引するネットオークション、セリ方式のライブオークションもある。骨董屋にも、店舗での商売、店舗を持たずお客さんを訪問して行商している人、一般人とは一切取引せず業者間取引を専門にしている人など、いろいろな業務形態があるということだ。骨董屋を営むには、警察署が発行した美術 商鑑札が必要で、過去に犯罪歴がないことが前提条件。
骨董屋さんに入る時のマナー
たいていの骨董屋は狭いスペースに所狭しと商品を置いているので、店内では、鞄、コートの裾、肘などでひっかけて落としたり、壊したりしないように注意しなければならない。また、商品を手に取る前に、店主に触ってもよいか聞くべきである。特に、漆、蒔絵、鉄、銅、茶の釜、白木のもの、絵の具ものなどは、店主にとっては触って欲しくない代物である。焼き物でも、磁器は硬いので触っても大丈夫だが、両手で持つようにし、指輪などが当たらないよう注意する。また、陶器は脆く欠け易いので、決してむやみに叩いたりしないよう気をつける ことが必要だ。
(門 美智子)