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九州で一生懸命

古くから大陸との交流の玄関口として栄えてきた博多。世界最大のカルデラで九州の臍、阿蘇山。今も白い噴煙を上げる桜島。鎖国時代、西洋文化の唯一の窓口長崎。九州は恵まれた自然と豊かな文化に溢れています。

その九州福岡に大阪からやって来て、もうすぐ十年なります。それまで九州を訪れたのは、修学旅行を含めわずか2回。親類、友人、知り合いは皆無。ここでガイドとして働くなどということは、当時の私には考えられませんでした。そんな私が数ヵ月後に、以前お世話になったことのあるエージェントから声が掛かり、九州ガイドデビューするわけですから、人生は本当に分らないものです。

「神社」
とはいうものの、しばらくは悪戦苦闘が続きました。言ってみればホームグラウンドがアウェー状態。訪問地の下見は必須ですが、九州は自然を満喫するコースが多く、観光地間の移動距離も長く、また初めての所が多くて、当然の事ながら時間がかかってしまいます。時間的余裕のあるときはいいのですが、仕事が間際に入ってきたり、直前に変更になると、もう真っ青。そんな‘にわか’地元ガイドが曲がりなりにも今日まで何とかやってこられたのは、素晴らしいガイド仲間の存在があったからです。自分の足や経験で得た貴重な資料を惜しげもなく提供してくれたり、仕事中さりげなくサポートしてくれる、そんな友人、先輩に幾度となく助けられました。

九州でガイドを始めた頃の私の頭の中の九州地図は「白地図」状態。九州七県の位置関係がどうにか分る程度。ここに地名を書き込み、川が流れ、山々の高低が判るよう茶色の濃淡で描き、点と点でしかなかった観光地を道路で繋ぎ、さらに観光地間の移動にどのくらいかかるのか、車窓の風景、トイレ(重要です!)休憩、駐車場、等々を書き込みました。下見や情報収集、仕事を繰り返しながら、プロのガイドとして使える「観光地図」が出来上がっていく中で、私は九州の魅力にすっかりはまっていました。

「浴衣姿」
ガイドの仕事の魅力は、異なる文化を持ついろんなお客様と出会えることだと言われますが、私も強くそう思います。そして、世代を越え、情報を共有し、良い刺激を与え合い、切磋琢磨できる素晴らしいガイド仲間との出会いも、またこの仕事の大きな魅力だと思っています。

一生懸命 ―― 私はこの言葉が好きです。ガイドを始めて十数年。空港とホテルの送迎から始め、FIT、エージェントの団体ツアー、クルーズ、VIP、インセンティブ。地域も九州、沖縄、時折本州に上陸。家族の事情が許すときは、大阪までスルーのツアーもさせていただいています。最初は準備したガイディングを消化するのが精一杯でしたが、お客様の反応を見る余裕も生まれました。今まで何とか続けられてこられたのは、やはり一生懸命やっていることをお客様が感じてくださっていたからと思います。これからもお客様とのふれあい、素敵な仲間との交流を通して、新しい発見の喜びを感じつつ、独り善がりでない「日本」を一生懸命お客様にお伝えしていきたいと思っています。

(尾崎 初恵)

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