関空な一日
関空の観光案内所への来訪者は一日平均200人。行楽シーズンは400人近くになります。国際空港なので国籍はまちまちですが、やはりアジア系が主流を占めています。問い合わせの方々は、到着便時間帯によってころころと変わってきます。午前中はヨーロッパ系、正午前後は韓国、中国系、午後は北米中心といった具合です。韓国便はたくさんあるので時間帯を問わず、流れてきます。これまでいろいろな奇問難問珍問と格闘してまいりましたが、今日は皆さんに少しご披露しましょう。
*Pilgrimage to 88 temples
「今着いたところだけど、これから八十八箇所めぐりをしたい。どこをどう行けばいいの?」
えッ!見上げると、フランス人のご年配夫婦が手をつないでカウンターで立っているではありませんか。一体全体、なんで八十八箇所なんて知っているのだろう?どっから説明したものかと、ちょっとためらっていると、カバンからおもむろに取り出してきたのが、名の知れた分厚いトラベルガイド。八十八カ寺のリストを見せてくれました。ははぁ~ん。この人たち、本気で行く気だわ!私は四国全体の地図を取り出し、説明にかかりました。地図やパンフレットをどっさり抱え込み、また二人手をつないでバス停へと向かわれた哀愁漂う後ろ姿。未だにあの人たちのお遍路姿を勝手に想像しては、無事行けたのかな?と思うことがあります。
*I lost my father!
プルル~ン!プルル~ン!「ハイ観光情報センターです。」「I lost my father! Help me, please!」えッ?LOSTファ~ザ~?!落ち着いて聞いてみると、こんな事らしい。電話主は日本で英語を教えているオースラリア人女性。お父さんが娘に会いに関空へ。当初自分が関空まで迎えに行く予定であったが、急用ができたため、送迎タクシーを手配。お父さんをピックアップしてもらって京都の自宅まで連れてきてもらうことに。ところが、お父さん、そんな手配がされているとは露知らず。到着ロビーに出るや否や、迎えに来ているはずの娘を探すが見つからず。自分の名前が書かれた紙を持って立っている出迎えのタクシーの運転手さんを素通りし、案内カウンターに直行。「オーストラリアまで電話したいけど、どうやってかければいいの?」お父さんは、妻の所に娘から何か連絡が入っているか確認しようと思ったらしい。一方、タクシー運転手はお客をキャッチできない事を依頼主に連絡。あわてた娘さん、当所に問い合わせてきたという経緯であった。
娘さんからの電話を受ける10分ほど前、背の高い初老の男性がカウンターに来られたことを思い出した私。もしかしたらあの人だったのかも?すぐに、電話の娘さんに、お父さんかもしれない人がカウンターに来られた事を告げ、10分後に電話してもらうことに。案内した公衆電話コーナーにダッシュするが、姿なし。しまったぁ・・・・遅かったかぁ・・・いや!あの人、タバコを吸えるところも訊いていたわ!今度は2階の喫煙コーナーに駆け上がる! と、いたぁ!あの人が・・・
家に電話しても妻と連絡が取れなかったお父さん。煙草をふかしながら、なす術もなく、スーツケースにチョコンと腰掛ける寂しげな姿。思わず抱きしめたくなるのをこらえつつ、「ひょっとして、娘さんを探しておられますか?お名前は000さんですか?」「そうです。なんで知っているの?」わぁ・・・間 にあった。事情を話し、無事タクシーの運転手さんに引き合わせ、めでたく一見落着。
こんな事件がone after another の関空な一日でした。
(門 美智子)