2009年JFG関東地区5日間新合格者研修会レポート
通訳案内士試験は政府の訪日外客促進政策の影響を目の当たりに受けてきています。
ビジットジャパンキャンペーンが開始された2003年度試験までは、合格者数は300名台でしたが、それが5年の間になんと5倍に膨れ上がりました。ずっとバス1台分の定員で開催してきたJFGの関東地区の研修会も、この合格者急増のあおりを受けて合格発表直後に満員になってしまう状況となり、2年前からバス2台口で対応を始め、昨年は机上研修も行うなど解決策を模索してきました。しかしながら2日間の机上研修を受けた合格者が翌年再度5日間研修の受講申し込みを希望していることが判明したため、今年度はバス3台132名定員での開催を決めました。
今年も説明会でJFGを理解していただいた上で受講申し込みをしてもらえるように、締切日は説明会後に設定し、先着順でなく定員に達した場合は抽選としました。締切日は他の研修会よりずっと早くに設定し、万が一の場合は他の研修会申し込みに間に合うように配慮をしました。結果的には3台口にしてもやはり抽選になってしまいました。ご希望に添えなかった合格者の皆様にこの場を借りてお詫び申し上げます。
以下に本年度の研修会の様子をご紹介いたします。
研修1日目:午前:セミナー、午後:成田空港実地研修
午前中セミナーでは「ガイドの基礎知識」の講義がありました。受講生のほとんどはこれを聞いて初めてプロのガイドとボランティアの大きな違い、そしてガイディングだけが通訳案内士の仕事ではないことを知りショックを受けたようで、研修に臨む表情が一段と引き締まったように見えました。
JFGの研修会はバスを使って実際のツアーに見立てた実地研修が特徴ですが、今年も成田空港で受講生から、「いつも仕事で利用している成田空港だが、到着ロビーなどはいつもさっと通り過ぎるだけだったので、今回ガイドとしてお客様を迎えるまでに到着ロビーでこんなに多くの準備をしなくてはいけないと分かって驚いた。」との感想がありました。
研修2日目:東京実地研修
天気にも恵まれ明治神宮では新郎新婦が記念撮影をしているところにも遭遇しました。「案内する立場で見る東京は視点の違いからすべてが新鮮で興味深い場所に見えた。」との感想もあり、受講生は次第にガイドの仕事の面白さに目覚めてきたようでした。
研修3日目:日光実地研修
「天然の冷蔵庫」とのニックネームそのままの、寒い日光研修となりました。東照宮の魅力を寒さなどものともせぬ熱気で解説する講師たちに受講生は「プロの仕事とはどういうものか見せつけられ圧倒された。」との感想を述べていました。
研修4日目:鎌倉・箱根実地研修
ベイブリッジから横浜の町だけでなく富士山まで眺めることが出来て、この日は遠足気分で始まりました。箱根に入ると天候は一転、強風が吹き荒れていました。何とか芦ノ湖遊覧船までは予定通りだったのですが、その直後箱根ロープウェイは運行停止になってしまいました。こういう状況には慣れているベテラン講師陣は早速これをケーススタディの実地研修に見立てて代替案を紹介していました。受講生からは「こういう場合にどう対処したらいいのかが実体験出来てよかった。」とのポジティブな感想が集まりました。
また3日目4日目とも、講師がロングドライブに使える自前の小道具類を紹介してくれたことが初心者である受講生にはありがたかったようです。
研修5日目:セミナー
この日も4日間のまとめになる「ガイディングのトピックス」の講義に始まり、プログラムは盛りだくさんでした。やはり経済危機に伴う業界の雇用状態が受講生には一番気になっているようで、言語別懇談会では「ガイドで生活ができるか?」、「経験がないと面接も受けられないようで不安だ。」などと真剣な話し合いが続きました。
一日も早くプロのガイドとしての第一歩を踏み出したいと願う熱心な受講生、そしてそれに負けないほど真摯な態度で準備をして研修会に臨んでくれた講師、スタッフ陣。今回の研修を終えて、海外からのお客様に日本を紹介するという大切な役割を持つ私たち通訳案内士が、 その責務に見合うだけの社会的な評価を受けられるように、JFGの果たすべき役割はますます重くなっていることを改めて感じました。
(松本美江)