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能の楽しみ方

研修会全景
観世流能楽師シテ方・重要無形文化財総合指定保持者の山本章弘氏に、実演を交えてのお話を伺った。

能の大成
「能は室町時代に大成した」と言われる。
かつて日本においては農業が主産業であり、農作業を共同で行う際、リズムをつくる音楽としての田楽があった。そして当時の今様(はやり歌)を面白おかしく歌う申楽(猿楽)も、芸能として発展した。他に、収穫祭など農業関係のお祭りの芸能としての神楽もあった。この三つが組み合わさって能となったと言われている。
地域に密着していた田楽、移動することができた申楽などから発展して能があり、旅役者であった申楽をする人の中から観阿弥・世阿弥の親子が登場したといわれる。

能楽師
観世・宝生・金春・金剛の四流派に、江戸時代に喜多が加わった。全国に能楽師は約1400人いる。能楽協会に所属する1400人は全て専業のプロであり、そのうち11人が人間国宝である(ちなみに文楽協会には93人が所属して、うち6人が人間国宝である)。
舞台に出演する能楽師はシテ方、ワキ方、狂言方、囃子方に分かれる。昔は五座それぞれに座付で囃子方がいたが、全て途絶えてしまった。舞台に出演する能楽師の組み合わせは毎回変わる。能楽師の数は減ってきている。世襲制というわけでもなく、大卒でこの世界に入る人(能楽研究部等を経て)もいる。かつて女性は受け入れられなかったが、現在は女性もいる。ただし、出演できない演目がある。厳島神社の能舞台は今でも女性は不可。

サウンド重視の芸能
文楽や歌舞伎などの他の伝統芸能に比べて、能はサウンド重視であるが、その言葉が分かりにくい。室町時代の発音そのままの台詞のため、現代人が聞いても判断できない単語がある。現代日本語が失ってしまった発音も含まれている。これらの台詞は師匠から弟子へと全て口伝されるため、当時のまま今に残っているのである。

着付け
能の楽しみ方
西洋音楽とはちがい、邦楽は非日常の音楽である。リラクゼーションの音楽なので、疲れている現代人は舞台を見ながら寝てしまっても良い。眠っていても何かを感じることはできるので、起きたときに何か気分が変わっていたらそれで良い。
観てもっと楽しくなるようにするには、謡や舞を習うのも一つの方法だ。舞台を見る→習う→見る→習う・・・・これを繰り返すことで、謡の意味がつかめてくるようになる。文楽や歌舞伎には背景(大道具)があるが、能には松を描いた絵(鏡板)が一枚あるだけであり、この背景は内容とは関係がない。登場人物の場所移動などのストーリー展開や、登場人物の心理描写なども全て謡で説明されている。謡を聞いて理解できるようになると、能をさらに楽しめるようになる。

(東野 妙)

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