通訳ガイド試験体験記
昨年の春、本屋にて一冊の本が目にとまりました。その本のタイトルは『通訳ガイドの仕事』。私は、以前と言っても、もう20年も昔のことですが、海外で現地ガイドの仕事に接する機会があり、彼らの魅力的な ガイディングに感銘を受け、恐れ多くも、いつか自分も彼らのようなガイドになりたいと思ったことがあります。その後、会社で技術翻訳の仕事に携わってきましたが、上記の本を購読後、20年前の夢が蘇ってきました。ガイド業への転職あるいはガイドと翻訳の2足の草鞋稼業とでもいいましょうか、そのような無謀な計画は、体力的にも、経済的にも今しかできないと判断し、何とか家族を説得し、夢の第一関門である通訳ガイド試験の準備を始めました。
まず、一次試験の対策として、『ガイド(通訳案内業)試験英語過去問解説』というタイトルの問題集を購入し、過去14年間の一次試験問題を実際にやってみて、その傾向をつかむことに努めました。当時、省庁の再編があったばかりでしたので、国土交通省を含めて、省庁の新名称も覚えました。それから、『ジャパンタイムズウィークリー』という週刊の英字新聞を講読していましたので、記事を真剣に読むように心がけました。この時はまだ会社に勤めていましたので、主に昼食時の30分を喫茶店での試験勉強に充てました。試験当日、単語の問題において国土交通省以外自信を持って答えられるものが見当たらず、来年があるさと諦めながら、うなだれて帰路につきました。そのような訳で、娘から合格通知を手渡されるまでは、試験のことを完全に忘れていました。
次に、二次試験の対策として、通訳ガイド専門校の二次試験対策セミナーを受講し、模擬面接によるトレーニングに励みました。加えて、毎週土曜日に参加している地元の英会話サークルで、日本の事物について積極的に発言するように努めました。それから、家や車の中では、できるだけFENを聴くようにしました。それでも、面接試験では非常にあがってしまい、帰りの電車のなかで、3問出題されたうちの最初の質問がなかなか思い出せず、まるで記憶喪失にでもなったような気分を味わいました。これは、今でもクイズ番組をみているときに時々経験します。
最後に三次試験の対策についてですが、これも上記スクールで三次試験対策セミナーを受講し、講師の推薦してくれた『基礎からベスト日本史B』と自分で見つけた『地図で訪ねる歴史の舞台』を中心に、日本の歴史と地理についての知識の習得・温習に励みました。試験では、古代遺跡に関して、これまでの傾向に基づいて重点的に憶えたにもかかわらず、一問も出題されず、愕然としました。これもあの捏造事件の影響かと勝手に解釈し、落ち込まないようにしました。
以上、私のガイド試験体験記について簡約してみました。JFGの新人研修会では、更に幅広い知識の習得と充分な体力が必要であることを思い知らされ、翻訳の仕事の合間にジャパンアルマナック等の日本に 関する書籍を読み、時々、思い出したように地図で地名をチェックし、テニスとジョギングで体力低下を防ぎながら、いつか、ガイドとして観光地に立てることを夢見ています。
(鈴木 隆夫)