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大神(おおみわ)神社から山の辺の道へ

大神神社
「日本人の宗教は何?」お客様からよく受ける質問である。
私は「日本人の多くは信心深くありませんが、宗教を否定しているわけではありません。年中行事や通過儀礼はきちんと行い、一般的にお宮参り、七五三は神道で、結婚式は神道やキリスト教で、葬式は仏教で行います。私もその一人です。」と答えることにしている。最近では神道、仏教とキリスト教が平和共存している日本独特の宗教のあり方を肯定するお客様も多い。
仕事で何度か参拝し、一度登ってみたかった大神神社の御神体である三輪山(467m)にプライベートで登ることにした。大神神社は奈良、JR三輪駅から徒歩5分のところにある。三輪山そのものをご神体としており、本殿を持たない原始神道の形態を残している。登拝口は大神神社の摂社である狭井神社にある。入山手続きをしたら、「つつしみと祈りの心をもって登るように」など入山心得を聞く。飲食、写真撮影は禁止である。御幣でお祓いをし、首には「三輪山参拝証」の襷をかけ、竹の杖を手にして登り始める。道はあるものの樹木の伐採は禁じられているためかなり自然に近い状態である。木陰が多く快適で、自然に抱かれている感じがとても心地よい。木立を通して射す光が美しい。行場である「三光の滝」、巨石群の中津磐座を経て、木の根が露出している険しい道を通り、山頂に到着した。そこには見慣れた社殿はない。やはり巨石群をしめ縄で囲んである奥津磐座(おきついわくら)がある。参拝して下山したが、神道の原型にふれたようなすがすがしく豊かな気分になった。
大神神社との最初の出会いは4年前だった。ウオーキングツアーを引き受けたのがきっかけで日本最古の道である「山の辺の道」を辿ることになった。「山の辺の道」は三輪山から北へ連なる山裾を縫うようにのびる起伏のある全長26kmの道である。中でも大神神社から石上神宮までの約15kmの道は元伊勢といわれる桧原神社、相撲発祥の地である相撲神社、「古事記」にも記載のある景行天皇陵、崇神天皇陵、弘法大師が開いたとされる長岳寺、歴代天皇の崇敬が厚い石上神宮などがあり、景観が素晴らしく、歴史的な史跡が豊かである。
「山の辺の道」のウオーキングツアーは2度経験したが、お客様にも大変好評であった。このコースのよさは何と言っても日本最古とされる大神神社からスタートできることである。拝殿奥にある三ツ鳥居は明神鳥居3つを1つに組み合わせた特異な形式のもので、お願いするとお客様もお祓いを受け、三ツ鳥居の前で参拝することができる。ご祭神は大国主神で知られる大物主大神。大物主大神は蛇神であると考えられ、水神または雷神としての性格を合わせ持ち稲作豊穣、疫病除け、酒造り(醸造)などの神として信仰を集めている。例年11月14日には醸造安全祈願祭(酒祭り)が行われ、地元奈良をはじめ伏見、灘など関西の酒造関係者が多数参列して醸造の安全を祈り、お守りの護符と神社で造った酒林(杉玉)を授かって帰るそうである。酒林は、元々は新酒ができた合図だったが、次第に酒屋の看板として常時吊るされることが多くなったらしい。
次は醸造安全祈願祭の折に是非訪れてみたいと思っている。しばらく大神神社にはまりそうである。

(小木曽 裕子)

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