日本の文字
皆さんご存知のように日本に来た外国の人は日本の文字に興味を持たれます。私は「日本語には文字が3種類あり、今ではアルファベットやアラビア数字も使うので、実際には5種類です」と言い、全種類が書かれた封筒等を見せることにしています。厳密に言うと日本の文字ではないですが、やはり漢字に一番関心があるようで、木 → 林 → 森の説明はいつも楽しんでもらえ、「それでは大きな森はどう書くのですか」と聞かれたこともあります。
漢字の文字数や、小学校卒業までに習う文字数、常用漢字の文字数等を調べている時に「漢字を覚える労力を他に使えないものか」と思ったことがあります。実際、明治維新の時や太平洋戦争後には日本の文字を廃止し、ローマ字を使うことが検討されたりしました。しかし、やはり日本語を表現するためには日本の文字は便利です。
日本でも最近は吹き替え版の洋画も出てきましたが、以前は字幕で見ていました。昔、ドイツの友人に日本では外国の映画には字幕が表示されると言ったら、ドイツでは外国の映画は吹き替えなので「日本人はなんて勤勉なんだ!」と驚かれましたが、それは日本人が勤勉と言うよりは、漢字が少ない文字数で多くの意味を表わすことができるからだと説明しました。特にドイツ語は長い文字数の単語が多いのでドイツ語の字幕で映画を見るのは大変だと思います。私も時々ドイツの映画やニュースをドイツ語の字幕付きで見ることがありますが、読むのに必死で音として全然入って来ないのでリスニングの練習にはなりません。
4年前の2011年は日独修好通商条約が締結されて150周年で、そのオープニングセレモニーに参加する機会がありました。会場正面の舞台には日独の国旗が飾られ、両方の言葉で「日独交流150周年」と書かれていましたが、その文字数の違いには驚きました。
漢字の話ばかりになってしまいますが、漢字には新しい言葉や知らない言葉でも大体意味が分かるというメリットが有ります。「内科」「外科」等は子供でも意味がわかりますが、欧米の言語では診療科名はギリシャ語起源の物が多いので、知らないと推測もしにくいと聞いたことがあります。
日本の文字を読む方向も良く聞かれる質問です。縦に書いた文字は右から読むのか、左から読むのか。縦書きも横書きもできるのが日本の文字の特徴の一つです。本の背表紙は縦に書くのが当たり前だと思っていましたが、アルファベットは縦に書く習慣が無いので、本の背表紙でもほとんどが横に書かれています。本屋で縦に置かれている本のタイトルは慣れていないと読みにくいです。
最近はパソコンで文書を書くことが多くなり、漢字も書けなくなる一方ですが、せっかく小さい頃から身につけた便利な文字なので忘れないようにしたいです。そしてひらがな、カタカナも含めた日本の文字の特徴、良さをお客様に紹介していきたいと思います。
(浅野 真弓)