名古屋コスプレ事情
毎年7月から8月にかけての約一週間、名古屋はコスプレイヤーであふれかえる。世界コスプレサミット(略してWCS)が開催されるのである。成りきることに貪欲な名古屋人気質に加え、明治村、名古屋港、鶴舞公園などのコスプレイヤーに人気の撮影スポットがあり、以前からコスプレイベントが多く、コスプレ交流が盛んだという名古屋で、2003年に第1回が開催された。最初はドイツ、フランス、イタリア、日本のわずか4カ国5名の参加で座談会という形で始まったが、2005年、愛知万博の年に初めてチャンピオンシップ形式になった。
その後も年々世界中でコスプレ熱は高まり、2014年の第12回大会には26の国と地域が参加。メイン会場オアシス21の来場者22万人、世界各国の予選を含む観客動員数は120万人と言われる。各国の厳しい予選を勝ち抜いた代表が名古屋に集結。自作であることがルール。凝ったコスチュームをまとって、練習と工夫を重ねたオリジナルの演技を披露し、競いあうのである。
クールジャパンの波に乗ってWCSへの注目度は増幅し、2006年からはグランドチャンピオンには外務大臣賞が贈られるようになった。その後、ビジットジャパンキャンペーンの一環として経済産業省、観光庁、中部運輸局が後援に付くようになった。ANA、docomo、ブラザー等の大企業も協賛に名を連ねる。来日した代表者達が正装(コスプレ衣装)で省庁や県庁、市役所などを表敬訪問する様子は何とも不思議な光景としてニュースに流される。
「コスプレをする人は自分とは別世界の人」という程度のイメージしかもっていなかった私に、WCS本選後の参加者・関係者を観光案内する仕事が来た。 日本のサブカルチャーの代表としてアニメやマンガが世界で人気を博していることは耳にしていたが、コスプレとは何ぞや?との興味もあり、ネットやテレビの特集番組で各国予選の様子を探してみた。 すると各予選会場には入りきれないほどの観客があふれ、晴れて優勝して「憧れの夢の国・日本」そして「コスプレの聖地・名古屋」への切符を手にしたパフォーマーが感激の涙を流すのを見て驚いた。さらに仕事当日までに何か所かのイベントや本選を実際にのぞきに行って、その熱気に圧倒された。
このイベント、ステージ上の参加者だけではなく観客もほぼコスプレイヤー。期間中に何か所かで行われるパレードには正式参加者に続いて、コスプレした県知事、市長を含め2,000人もの一般コスプレイヤーが目の前を意気揚々と通り過ぎていく。
当然会場付近は大撮影会となり、いわゆるカメラ小僧に向かってポーズを決める姿も多くみられる。
何も知らずにたまたま通りかかった人は、人気漫画に出てくるNARUTOがラーメンを食べていたり、孫悟空がスマホをいじっていたりするのを見てキツネにつままれたような気持ちになるのである。
私の案内当日、戦い終えた各国代表は残念ながら普通の服装だったので、どの子が昨日のセーラームーンだったのか私にはわからなかったが、 彼らのコスプレに賭ける熱い思い、いかに日本へ来たかったか、どんなに真剣にとりくんでいるかがひしひしと伝わってきた。移動のバスの中ではずっとアニメソングの大合唱。(もちろん日本語で!)
あれから数年、ますます進化するWCS。2015年には参加がさらに2チーム増、ラグーナ蒲郡でのオールナイトイベント、明治村での撮影会、アニメソングカラオケ世界大会など新たな企画も開催。すでに世界中のコスプレイヤーは2016年大会への予選を見据えていることだろう。2016年大会の情報はWCSのHPで。
(春日 三和子)