当世若者結婚事情
明治神宮を出て原宿駅を左に見て表参道に入ると、神宮の静けさから一転して右も左も若い男女であふれています。だいたい渋滞していてバスもなかなか前には進んでくれません。そんな時、私は日本の若者の結婚に話題を持っていくことにしています。明治神宮で花嫁、花婿を見ることが出来たときにはなおさらぴったりの話題です。
2000年の国勢調査によると、生涯未婚率(45~54才の未婚率の平均)は男性で12.8%、女性で5.6%と過去最高だといいます。結婚は80万組(この年はミレニアムで特に多かった)。離婚は26万組。
社会の急激な変化と共に若者の結婚観、価値観も変化しています。
現在の生活に満足している、わずらわしい、仕事を続けたい(女性の場合)、等、様々な理由でシングルを選択する人が増えているのは事実ですが、結婚したくない、とはっきりと言い切る人もまだ少数派なのです。多くは 「今は急がないけれどいずれは」「いい人がいれば」結婚したい、と思っているのです。結婚したい派の理由は「いいひとと出会った」「子供が欲しい」「友人が結婚している」などです。
30年ほど前までは半数以上だった見合い結婚は全体の10%にすぎず、90%が恋愛結婚です。出会いは職場や仕事上が最も多く33%、友人、知人、兄弟を通じてが27%、学校が10%。昔よくいた親戚の、あるいは近所の世話好きの”でしゃばりおよね的”おばさんが姿を消してしまった今、仲人を介する見合い結婚が少なくなっているのは自然の流れです。特に都会では。
しかし、結婚はしたいけれども職場の性格上出会いに恵まれない、自身の性格上きっかけをつかめない、あるいは、出会いはあっても結婚相手にはもっと条件のよい人を求めるという現実派も多くいるはずです。そういう若者に目をつけたのが結婚情報会社で、言ってみれば仲人の企業化です。
もちろん、昔から結婚相談所はありました。明治12年には大阪に日本初の結婚相談所が誕生しています。自治体、市町村の運営するものもあります。しかし現在のように大手資本の経営による規模の大きな企業に成長したのは80年代に入ってからのことです。
全国に何万もの会員を抱えコンピューターを駆使して豊富な情報の提供を売り物にしているのが大手結婚情報会社で、その大手にはほとんど大手資本が入っています。例えば(株)ツヴァイはジャスコグループの100%出資会社です。
料金、紹介システムは各社様々ですが、入会金15~30万円、月会費が5,000~10,000円、1年間活動すると20万~40万円(月に何回か催されるパーティー、コンピューターによる情報収集、お見合い費用等)といったところが平均値でしょうか。
入会にも厳しい審査があります。年齢制限もあり、男性は40才まで、女性は35才くらいまでです。
紹介方法の一例ですが、毎月2名の紹介状が自宅に郵送されます。本人の身長、体重、学歴、勤務先、年収、家族の学歴、勤務先等、詳しいデータが提供されます。検討の結果、紹介を希望する場合にはその旨を情報会社に通知すると、情報会社から先方にこちらの紹介状が同様に送られます。先方が会うことを承諾すると、提携の一流ホテル、レストランで1対1で歓談し、双方の意思が一致し、交際決定になれば初めてお互いの連絡先が知らされるのです。そのまま5ヶ月経つと正式交際になりめでたく結婚。正式交際までは他の紹介も続けられるので二股、三股、四股 までもかけるツワモノもいるという話ですが。
ずいぶんお金がかかるシステムです。でも、知人の紹介だと断りにくいけれども、会って気に入らなければ簡単に断れるし次々に代わりを紹介してくれるこうしたシステムのほうが気が楽、という見かたもあります。
昔は結婚相談所に行くのはモテない男女、最後の手段、というマイナスイメージがありましたが、今はツヴァイ、キューピッド、サンマークライフクリエーション等、ほとんどの会社がおしゃれなカタカナの名前でイメージチェンジを計り、抵抗感をなくしています。知人の娘さんは高学歴で見目も麗しく、過去に複数の男性とのお付き合いもありましたが、(つまり決してモテないタイプではない)結局は結婚情報会社を通して紹介されたいわゆる”3高(高学歴、高収入、高身長)の男性”と結婚して幸せに暮らしています。
正式な結婚が少なくなった欧米に比べれば、日本の若者はまだ結婚願望は強いといえるでしょう。見合いから発展した結婚相談所や結婚情報会社が、費用がかかるにもかかわらず繁盛しているのも現代日本の一面ではないでしょうか。
(T.T.)