蔵 王
蔵王とは山形と宮城の両県にまたがる蔵王連峰をさす。蔵王連峰を横断し、山形県と宮城県を結ぶ山岳ドライブコースを「蔵王エコーライン」という。蔵王はスキーと樹氷で有名であるが、お釜や温泉、ハイキング、高山植物、 紅葉など四季を通して楽しめる国定公園だ。
蔵王は複式活火山であり、1923年の噴火により現在のカルデラ湖ができた。大きさは深さ28m、直径330m、周囲1kmで、強酸性のため魚はすめない。見る方向により色が変わり五色沼と呼ばれる。宮城側から山頂に向かう途中に 不動滝と三階滝がある。不動滝は高さ53.5m、三階滝は181mある。
蔵王は奈良時代から山岳信仰の対象であり、平安時代中頃には空海の両部神道を唱える修験者が入るようになった。吉野の蔵王堂より蔵王権現を分霊してもらい、蔵王山頂にある刈田岳神社と麓の刈田嶺神社に併置したので蔵王と いう。標高はいちばん高い熊野岳で1841mである。
山形蔵王には温泉のあるホテルやロッジが120ほどある。そのほか共同浴場が3つと大露天風呂が1つある。湯量が 豊富で皮膚病や神経痛などに効く。
宮城蔵王には昔ながらの湯治風景が見られる遠刈田温泉がある。1600年ごろに掘り当てられた温泉で、江戸時代には蔵王権現信者や湯治客などでにぎわった。ラジウムが多量にふくまれているので切り傷、やけど、神経痛などに効く。
蔵王スキー場は規模が大きく雪質もよい。リフト数が31で滑降距離が31kmあり、さまざまなタイプのスロープが楽しめる。初心者にはダイヤモンドバレー、上級者には傾斜38°の横倉壁がある。樹氷見学の場合は「樹氷見学 です」と言うと優先的にロープウェイに乗れる。
初夏から夏にかけて芝草平や駒草平を中心にハクサンシャクナゲ、コマクサ、チングルマ、ムラサキヤシオツツジ、ハクサンイチゲなどのさまざまな高山植物が見られる。コマクサは高さ10cmほどの小さな花で、つぼみが馬の顔に似ているのでこの名がついた。他の植物と混生せず、瓦礫にのみ生育するので孤高の女王といわれる。9月にはミヤマリンドウが咲き、紅葉の頃はナナカマドが赤く色づく。
蔵王にはまたサルやカモシカなどの野生動物が見られるほか、「野鳥の森」でバードウォッチングもできる。
(山岸 八千代)