京都、つれづれなるままに
今、京都は祇園祭の季節。宵山、山鉾巡業と続きます。今から約1100年前、疫病退散、国土平穏を祈るため、国々の数の鉾、66本を作らせたのが始まり。今は32基の山鉾が約2時間かけて市中心部を進みます。こんこんちきちきこんちきち・・・浴衣姿の若い人たちも増え、蒸し暑いけれど楽しい夏の京都です。五山の送り火では、金閣寺、銀閣寺そばの其々の大文字、妙法、船形、鳥居形の文字が次々に点火され、京の晩夏をきれいに彩ります。戦時中に途絶えた時は、白い服を着た子供たちが大文字山で-大-の人文字を描いたとか。京都はしっかりと伝統が息づく街。
「都をどりは、よーいやさー」。京の春は舞妓さんのかわいらしい呼び声で始まります。京都には、祇園、祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒の5つの花街があり、祇園甲部の歌舞練場で4月に開催されるのが、都をどり。この辺り、花見小路は夕方5時から6時過ぎ、茶屋に急ぐ舞妓さん芸妓さん、料理を片手に自転車で走る板前さん、暖簾を手繰る店のおかみさんをカメラに収める絶好の場所です。四条通の北側、200mほどの石畳が続く白川南通は、川面に枝を映す柳に桜、はんなりとした宴の灯りなど、お勧めの散歩道です。小さな祠の辰巳大明神は、昔、舞妓さん芸妓さんが茶屋に行く時必ず参った神社です。所狭しと貼られた花名刺がそのことを物語っています。
一年で訪れる人が最も多い、秋の紅葉の季節。歌舞伎の中で石川五右衛門が「絶景かな、絶景かな、春の眺めは・・」と見えを切ったことで有名な三門から見る紅葉の海が広がる南禅寺。修行中の僧、永観がふと立ち止まった時に、振り返って「永観遅し」と呼びかけたという、めずらしい見返りの阿弥陀仏のある永観堂の境内にあふれる紅葉。また嵐山の天竜寺、入口から入ってしばらく歩くと大方丈の障子の間から見える庭園の紅葉。障子の枠が額縁となって、まるで一幅の絵画のようです。
春と秋だけでなく、冬の京都はこれまた必見。龍安寺の雪の石庭には凛とした美しさという形容がぴったり。ヨーロッパのお城の装飾によく見られる白と金の配色がありますが、雪を頂いた金閣寺はこの白と金が鏡湖池にも映り、息をのむほどきれいです。哲学の道の法然院。白砂壇にうっすらと積もった雪と静けさに身も引き締まります。雪の大文字も格別の趣きです。ある時、寺を幾つか拝観した後、折から小雪もちらついて、あまりの寒さにどこかでコーヒーを、と吉田山にあるカフェに向かいました。通りから山頂に向け石畳を歩くこと15分、木立の中に見えてきたのは大正時代に建てられたという建物。西側の窓辺に腰をかけると、右側には雪の白地に黒い「大」の文字がまだ紅葉の残る大文字山に浮かび上がり、左側には暮れゆく夕日、遠くの眼下には京の街が見えました。言葉に言い尽くせないほどの美しさ。帰りの足元を照らす雪洞の灯もやわらかく、ほっこりとした京の風情。春夏秋冬、季節ごとの京の風情を、お客様と一緒に存分に、素直に楽しみませんか。
(大橋 恵子)