ガイドの仕事を我々の手に取り戻そう
昨年4月、「通訳案内業法」が「通訳案内士法」となり、通訳ガイドの正式名称も「通訳案内士」となった。法改正により違法ガイドには50万円以下の罰金刑が課される事にもなった。また同時に有資格ガイドも技術の向上に努めなければならないと規定された。
にもかかわらず、状況が好転しているようには見えない。少なくとも中国語、韓国語に関してはあいかわらず無資格ガイドで観光地はあふれている。
例えば、皇居前広場には毎日数多くの外国人観光客が訪れている。しかし、我々有資格ガイドの姿を見ることは稀にしかない。浅草は自宅から近いため、通りかかる度に観察しているが、浅草寺周辺にはあれほどの韓国や中国語圏からの観光客が来訪しているにもかかわらず、我々の仲間と会う機会は殆どない。
観光立国をめざしビジット・ジャパン・キャンペーンを繰り広げている国の本音は、訪日外国人の数が増え目標が達成されれば万々歳であり、我々ガイドの仕事が増えようが増えまいが関心はない。ただ、建前上はそうはいかないので、ここ数年通訳ガイド問題について取り組んでいる。まったく通訳ガイドの現状に目を向けたこともないこれまでと比較すれば大きな進歩ではあるが、通訳案内士法の抜け穴をくぐり“添乗員”という名称で実質的には無資格である彼等を雇用している旅行会社を黙認しているから、国の施策は国家試験に合格し資格を持った中国語、韓国語ガイドの仕事拡大には何ら貢献していない。
昨年度の統計によれば、中国語圏からの訪日外国人は中国本土、台湾、香港、シンガポールからだけでも250万人以上だ。すべての人が観光目的ではないにしろ、通訳ガイドを必要とするツアーは右肩上がりにここ数年確実に増えている。しかし、無資格ガイド問題は通訳案内士法の改正後も何ら変わるどころか、悪化の一途をたどっているのだ。
このように言えば我々には希望も将来性もないように聞こえる。しかし、本当に我々には起死回生の道はないのだろうか。我々の手に仕事を取り戻す為に何をなすべきか、皆で考える必要がある。それで私は以下のように考える。
ひたすら良い仕事をする、お客さんを満足させることに集中する、常に誠実に取り組む。当たり前の事だが、要するにお客さんからまた次回も案内して下さいと言われるようになることだ。我々を雇う側が何と言おうと、お客さんから指名を受けられれば怖いものはない。「あなたの会社にお願いしても、ガイド〇〇〇さんをお願いできないなら他の会社に今回の仕事を回します」と言わしめるようになればすごいと思う。
JFGにはそのようなガイドが「雲霞の如く」いるという事を想像するだけで力が出る。お客さんから必要不可欠の存在と認められ、旅の主導権を奪回できれば、誰の顔色をうかがう必要もなく大いに力を発揮できるようになる。夢ゆめ、こんな事など出来るはずはないと思ってはならない。というのも、これしか我々ガイドが今の状況を打開する道はないと思うからだ。
理想に少しでも近づくために一致団結してがんばろう。
(中国語ガイド 小玉哲弥)