menu

通訳案内士のボランティア ― ウクライナ人学生と嵐山 ―

2023.4.15

ロシアによるウクライナ侵攻が終わりそうにありません。惨劇の映像を見るたびに心を痛めておりましたところ、昨年10月下旬にウクライナ人の学生をボランティアで嵐山にご案内する機会に恵まれました。

 

奈良の天理大学と天理市のサポートを受け、9人のウクライナ人学生が、昨年の夏から天理大学で学びながら避難生活をしています。
天理市からは一時金や月々の補助金が交付され、天理大学からは寮と大学の授業が無料で提供されています。彼らは、アルバイトで生活費を稼ぎながら、ひたむきに勉強をしています。

 

実は、彼らはウクライナにいた時にすでに数年間日本語の勉強をしており、日本語でもコミュニケーションがとれる能力もあります。詳しいご説明については、英語でガイド致しましたが、私はその日本語能力の高さに驚かされました。
アニメから日本に興味を持ち、日本文化について学び始めたといいます。キーウから来ている学生さんは、「家族の事が心配だけれど、家族は私が安全な日本にいる事をとても喜んでいます」と話していました。

 

朝9時前、まずは竹林へ向かいました。

源氏物語について学んでいる学生さんは、野宮神社で「憧れの源氏物語の世界にいる事が夢のよう!!」と語り、目を輝かせながら、お守りを購入していました。

 

ランチは「嵐山よしむら」にご案内しました。私は開店前のよしむらに並び、皆さんにはその30分間は大堰川を眺めながらアラビカコーヒーを楽しんで頂きました。
幸運にも二階の個室に通して頂けたので、お庭を眺めながらゆっくりお蕎麦を頂きました。 蕎麦はウクライナでも食べるそうですが、こちらのお蕎麦をとても気に入って頂けました。

そして、世界遺産 天龍寺へご案内。禅のお話をご紹介したり、座禅にも挑戦して頂きました。

 

そのあとは、人気のカフェex caféへ。このカフェではとても混雑する日は、アプリの案内システムを使われることがあります。この日もこのシステムを使って入ることができました。そして、青蓮院門跡の襖絵で有名な木村英輝さんの襖絵の和室に通して頂けました。
お団子を炭火で焼いて頂く、人気の抹茶スイーツを楽しんで頂きました。
独学で日本茶について学んだ学生さんは、玉露と煎茶の栽培方法の違いや、それぞれのお茶の入れ方まで、詳しくご存知でした。その探求心と知識の深さに、またまた驚かされました。

 

 

紅葉には少し早かったのですが、嵐山を満喫してもらえ、ガイドとして、少しでも彼らの力になれたことを、とてもうれしく感じました。
以前、現代アーティストの増田セバスチャンのトークショーで、「アートは何ができるのか?コロナに苦しむ人々を見て、自分の無力さを感じた。しかし、自分のアートを見て人々が想像力を育てることができたら、その想像力が相手の気持ちを想像し、人を傷つける行動に至らないかもしれない。アートで世界を平和にできるかも知れない。」と語っておられました。

 

私はまだ新米のガイドで、お連れする場所や行程の事で頭が一杯なのですが、「ガイドは何ができるのか?」と考えずにはいられませんでした。

 

外国人ゲストに日本の良さを正しく理解してもらう事は、戦争に至らないための大きな力になるのかもしれないと思います。そう思うと、ガイドの任務の重さを実感すると共に、こんなにやりがいのある、素晴らしいお仕事をさせて頂ける事に感謝します。
戦火を逃れて、憧れの国日本で学んでいる彼らをみて、ガイドとして自分ができることを精一杯していきたいと思いました。一日も早く、ウクライナに平和が来ることを祈るばかりです。

(青山康子 英語 奈良県在住)

ページ
トップ