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過熱するポストコロナの観光地

2023.10.15

ガイドにとってコロナ禍の3年間は、収入も途絶え、仕事へのモチベーションを維持するのも難しい、先の見えない厳しい期間でした。そしてやっと迎えたコロナ開け!

 

「3年待ってたのよ~、ようやく日本に来れたわ!!」と満面の笑みで続々到着されるお客様。JFGやエージェントからも、次から次へと仕事の依頼が舞い込んでくる、ガイドにとっては嬉しい売り手市場到来となりました。ここで3年間の減収分を一気に取り戻したいところですが、悲しいかな、私たちは忍者のような分身の術は使えず身はひとつ。受けられる仕事の量はおのずと限られます。それでも皆、例年以上に仕事を受けて、この怒涛のような日々を乗り切ろうとがんばっています。

 

さて、一気に国境が開いた日本で、各観光地はあっという間にオーバーツーリズムの様相を呈し始めました。現場では、いったい今何が起こっているのでしょうか。独自取材でまとめてみました。

 

人手が足りない!
コロナ禍では観光業界全体から人が流出してしまいました。今、急激にお客様が戻って来られても、現場では対応が追い付かず、新たに雇い入れたスタッフが十分な研修も経験も無いまま現場投入されているようです。お客様をうまく案内できずにロビーで右往左往するホテルのスタッフとか、行き先を確認しないまま成田空港からお客様を乗せて出発し、都内に入ってから道に迷う外国人ドライバーなど、ありえない話が聞こえてきます。

 

旅行会社も大わらわ?
ガイドを手配する側の旅行会社やホテルにも新人スタッフが増えているようです。そのせいか、渡される行程表に基本的なミスが散見されます。日付と曜日がずれていたり、休館日に博物館に行くような指示があったり。また、「これ絶対無理だろう!」と思わずツッコミを入れたくなるような行き先てんこ盛りの日程もあったりして、ガイド目線で念を入れて再確認が必要になります。

 

どこも激混み!
浅草、築地などの人気観光地。自由散策して食べ歩きをするのが楽しみなのに、路地という路地に人があふれているのを見て、足がすくんでしまうお客様もいます。中には、「こんなところは嫌!」と怒り出す方もいらっしゃるほど。そんな時、個人のお客様ならガイドはすぐ他の訪問場所をご提案しなければなりません。コロナ中、来年こそは!と下見をしていたことが役立ったと感じるのは、こんな時です。

 

路上でさまよう外国人
こんな状況下で、希望してもガイドを見つけられなかった外国人客は自力で観光をスタートさせることになります。スマホ片手に、不安気に街をさまよいつつ何とか目的地に行きつこうとするようですが、そんな時、グループを引率しているガイドを見かけると近寄ってきて「ねえ君、僕たちのガイドもしてくれない?」と、”ナンパ”をしかけてくることも。コロナ前には絶対無かった光景です。

 

穴埋めリレー方式のロングツアー
ただでさえ足りないガイド。加えて、コロナに感染したり声が出なくなったりして途中降板せざるを得ないケースも出ています。皆が出払っている時期に、代わりのガイドをどうやって見つけるか、、、。苦肉の策は「穴埋めリレー方式」。本来ひとりのガイドがスルーで担当するはずのツアーを、モザイクのように切り分け、体の空いているガイドが日替わりで担当するのです。日頃は個人事業主としてひとりで仕事を請けている私たちですが、このような非常時には皆で協力してバトンを繋ぐ連携プレーが必要となります。こうした“救援要請”にすぐに応じられるのも、失業中(!)はたからは遊んでいるように見えたかもしれないけれど、新スポットに足を運んだり研修会に出たりして、引き出しを増やす努力をしてきたからこそです。

 

この急激なインバウンド回復の波はやがて落ち着いてゆくのでしょうか? でも私たちガイドは、過熱気味の時と、天変地異で突然失職する時との両極端の間で、今後も翻弄されてゆくような気がします。それを「不安定」と嘆くか? いえいえこれは、スパンの長い「晴耕雨読」。晴れた日は野に出てお客様をご案内し、雨の日には書を手に取り、自己研鑽を積む。東日本業務研修委員会ではそんなガイド仲間の役に立つべく、次の研修に向けて、仕事の傍ら、鋭意仕込み作業中です。

東日本業務研修委員会 大日方由美(英語 東京都)

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