menu

「なぜ」と「日本刀」― 関鍛冶伝承館研修を終えて

2019.5.15

ガイディングで心がけている事の一つはゲストへの説明に於ける「なぜ」の概念です。「なぜ、そこにお連れするのか?」「なぜ、これをお見せするのか?」「なぜ、食事はこれなのか?」… 。 行程に入っているから、有名・伝統・名物だから等の説明ならガイドは不要です。ゲストにより楽しい思い出を作っていただくために、私達の国のことをより深く理解していただくために「なぜ」は必須だと思います。興味の深さの程度こそあれ、日本刀に全く興味を示さないゲストは稀です。では、なぜゲストに日本刀を紹介するのでしょうか?

今回、業務研修「ものづくり中部-伝統技術」に参加したのは「なぜ日本刀?」に対する答え探しでした。五箇伝と呼ばれる刀の名産地のひとつ美濃伝の地にある「関鍛冶伝承館」を訪ね、鍛錬場に於いて刀匠よりお話を伺い鍛錬の実演見学並びに体験、伝承館の見学、学芸員の方の説明という充実した研修内容でした。
鍛錬場に於ける二十六代藤原兼房氏のお話、二十五代と2人のお弟子さんとの作刀実演は、普段決して見聞きできない貴重な時間でした。ピンと張りつめた空気の中、鍛錬用の炉に二十五代がフイゴで空気を吹き込むごとに舞い上がる火の粉、炎の色を見ながら温度を調整した後、いよいよ鍛錬が始まります。向槌(むこうづち)を持った二十六代と2人のお弟子さんが、二十五代の小槌の音(ね)に合わせて、真っ赤に燃えた玉鋼(たまはがね)と呼ばれる四角い短冊形の鋼を小気味よいリズムで打ってゆきます。四人の真剣な表情と流れ落ちる汗… 単にものづくりの場ではなく、大袈裟に言えば神の領域を感じさせる空間でした。

伝承館では、日本刀の作り方に関する展示説明・映像、職人さんによる実演、多数の古刀剣の展示、学芸員の方のご説明とQ&Aなどにより、実際に自分の目と耳、そして身体で日本刀に触れることができました。特に鍛錬については、自分の感動をどのようにゲストに伝えられるか考えさせられます。この実体験があるからこそ、日本刀についてもっと知りたいと思いようになりました。日本刀に対してこれまで、武器、武士等ごく限られた視野でしか意識していませんでした。研修後、色々と調べる中で、私達日本人に大昔から深く根付いているものであることを知るようになりました。

(加藤 久和)

ページ
トップ