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【NEW】【通訳ガイドレポート】研修会レポート < 川崎と工場夜景 >

2025.10.15

残暑の残る去る9月10日、川崎の工場夜景をチャーターした屋形船でめぐる研修が行われた。参加者は総勢45名。集合場所から船着き場にマイクロバスで移動するうちに日は暮れ、船に乗り込む時には赤いおぼろ月が出ていた。

 

船は塩浜運河、京浜運河、田辺運河、南渡田運河と進みUターン。その後京浜運河を戻り、大師運河、千鳥運河を見て、元の船着き場に戻った。その間2時間、市民ガイドの國さん(川崎工場夜景ナビゲーター)に両側の埋立地に立つ工場についてたっぷりご説明いただき、充実の研修となった。

 

川崎と言えば京浜工業地帯。想起するのは高度成長時代に問題となった公害だ。しかし今では環境対策が十分取られ、煙突から大気に排出されるのは水蒸気のみ。プラごみや紙ごみなどの資源をリサイクルして新たな価値を生み出すプラントや、石油・化学のコンビナート、LNGの貯蔵タンク、近未来の燃料である水素を作り出す工場、首都圏のための広域防災拠点など、今日の日本社会を底支えしてくれる工場群が昼夜の別無く稼働している様は頼もしく、感動的でさえあった。そしてその夜景を観光資源にしようというアイディアは大当たり。この15年ほどで川崎工場夜景をめぐるツアーは、はとバス、クルーズ船、屋形船、観光タクシーなどで各種開催されるようになり、人気を博している。

 

研修中に紹介された各プラントについては、組合員専用ページの研修レポートに譲るとして、ここでは川崎という街について、少々ご紹介を。川崎はノーマークだったという方も、知っておけば鎌倉や横浜から都内に戻る途上に立ち寄る「引き出し」がひとつ増えるかも。

(大日方 由美 英語 東京都)

 

 

<川崎市 ― Colors, Future! いろいろって、未来>
川崎市は2024年に市制100周年を迎えた。東京と横浜に挟まれた東西に長い、人口155万人の政令指定都市である。行政区は7つ。大きく二つの地域に分けられ、地元の人々は「南部川崎」、「北部川崎」と表現する。どこを起点にこの二つの地域に分けるか?川崎市民の間でも色々な意見があるようだが、おおむね中間地点に位置する中原区や高津区のあたりから、JR南武線の立川駅方面に近い、地図上では西側の地域を北部川崎、東側の川崎駅方面に近い地域、および臨海部が南部川崎と呼ばれている。北部川崎は緑豊かな丘陵地が広がり自然に恵まれた地域である一方、南部川崎は工都のイメージが強い。市のロゴマークは「川」の字を表現する三色の縦三本の線。ブランドメッセージは「Colors, Future! いろいろって、未来」。川崎市の公式サイトに、この「ブランドメッセージがあらわすもの」が次のように掲載されている。「川崎は、多様性を認め合い、つながり合うことで、新しい魅力や価値を生み出すことができるまちをめざしていく」。

 

<金は海からすくうもの ― 京浜工業地帯の父 浅野総一郎>
今回の研修で訪れた工場地帯は川崎市の最南端、臨海部に位置する。川崎工場地帯の発祥地は、京急川崎駅に近い、現在のソリッドスクエアビルのあたりである。最初の工場が造られたのは明治の末期。近くを流れる多摩川の水運を利用可能なその地に横浜製糖の工場が建てられた。横浜製糖は後に明治製菓となる。
やがて工場地帯は臨海部へと移った。明治の末期、京浜運河の生みの親であり、埋め立て事業で財を成した浅野総一郎という実業家がいた。名言は「金は海からすくうもの」。欧米へ視察旅行に出かけた浅野が目にした当時のヨーロッパでは、大型貨物船が直接港に接岸され、積荷の上げ下ろしが行われていた。日本の工業、経済の発展のためには日本にも大きな港が必要であると考え、注目したのが、遠浅の海が広がる川崎、横浜間の臨海部だった。そして海底が掘られ、運河が造られた。これが臨海部で最大の運河として知られる京浜運河である。そこで得られた土を利用して造られた埋立地に大工場が誘致された。その後、公営事業が進められ、埋立地が広がっていった。現在、川崎市の臨海部は16本の運河と7つの埋立地で構成されている。

<富士山 浮世絵 宿場町 お大師さま>
京急・JR川崎駅周辺地区は羽田空港から程近い。京浜急行線で羽田空港国際線第3ターミナル駅から京急川崎駅までは約13分。車では約20分。京急川崎駅やJR川崎駅から徒歩圏内に、いくつかの見学スポットがある。

 

*川崎市役所本庁舎25階 「展望ロビー・スカイデッキ」
2023年完成の新庁舎は高さ116m。最上階の展望フロアは、東京、横浜方面、そして晴れた日には富士山が眺望できる新しいスポットである。9時00分~21時まで見学可能。見学料は無料。(2025年9月現在)

 

*川崎浮世絵ギャラリー~斎藤文夫コレクション~
川崎にゆかりのある浮世絵など、豊富なコレクションで知られるJR川崎駅北口直結の浮世絵美術館。

 

*東海道かわさき宿交流館
かつて川崎は東海道五十三次の宿駅だった。川崎宿の街並みや歴史、文化を映像と模型の展示で学べる。見学無料。

また、京急川崎駅から京急大師線に乗れば、京急川崎大師駅までは約5分の距離である。

 

*川崎大師(平間寺)
正月に多くの参拝客で賑わう川崎大師では年間を通じて様々なイベントが行われている。特に有名なのは、例年5月に行われる薪能と7月に行われる風鈴市。仲見世通りには川崎大師名物の久寿餅、とんとこ飴の老舗店をはじめ、様々な土産店が立ち並び、賑わっている。

 

日中にこれらのスポットをめぐり、今や川崎のソウルフードといわれるニュータンタンメンや焼き肉などの名物グルメを味わう。そしてなんといっても夜の楽しみは工場夜景観賞。より多くの訪日観光客の方々に羽田空港から少し足を延ばして、この地を訪れ、楽しい旅の思い出を増やしていただきたい。

 

参考文献:川崎産業観光読本(改訂版) 川崎産業観光振興協議会 発行

 

(佐保田 奈津子 英語 神奈川県)

(写真撮影・データ提供:吉元 純子 英語 神奈川県)

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