【NEW】【通訳ガイドレポート】通訳ガイド体験記 <私の天職 通訳ガイド>
2026.3.15
皆さん初めまして。
2017年から英語、2020年からドイツ語で観光案内を行っている75才のガイドです。
主な案内場所は東京、箱根、京都、大阪、奈良などです。
1.ガイド試験
通訳案内士の試験は今から振り返ると良い経験でした。
英語の口述面接の時、「なぜあなたはガイドになりたいのですか?」と英国人であろう男性試験官から質問を受けました。「出張中の英国の小さな町で体調が悪くなったとき、言葉も通じない中、小さなホテルのスタッフが夜中に私を町医者へ連れていってくれました。年配の優しいお医者さんでした。彼はあれこれ手を尽くしてくれて、幸運にも翌日に回復しました。村に流れていたクリスマスキャロル。今でも良い想い出となっています。そして今度は、私がガイドになって来日する皆さんのお手伝いをしたい」、そんな会話だったと思います。面接終了後、彼はhave a nice dayと笑顔で見送ってくれました。試験官ではなく新しい友人のようでした。
一方、ドイツ語の試験では色々苦労しました。語学の筆記試験が免除となる独検1級を受けましたが不合格でした。ただ筆記対策では時間をかけたおかげで語彙力がつき、口述試験では色々話せました。いくつかのお題から選んだのは「駅伝」でした。しかし緊張から、お題の紙をチラ見した時、なぜか「駅伝」を「駅弁」と勘違いし、「えー、各駅では美味しい・・・」としゃべりだした途端、違和感に気づき、あわてて、「ちなみに箱根は駅伝でも有名で・・・」と軌道修正。ドイツ人の女性試験官は苦笑い。でもこれで逆にリラックスでき、その後の会話も楽しめました。試験官も結局は人、お互いに気持ちが分かり合える、ガイドの現場を感じました。
2. 失敗と反省
数多くのガイドをやっていますと、沢山の反省があります。2つの失敗談です。
お台場で米国人をご案内した際、「なぜここにニューヨークの自由の女神があるのですか?」と聞かれ「日米親善です」と答えました。あとでアメリカ人のゲストは事実(日仏親善)を確かめ、私への信頼をなくしました。不評を買いました。知らないことは知らないと答え、後で説明するのが基本だとつくづく反省しました。
次は食事のお話。香川県直島での夕食で、地元の食堂で夕食をとりたいと希望するゲストをお連れしたローカル食堂。しかしそこは椅子のない畳部屋でした。膝を痛めているゲストは畳に座れず食事を断念。ゲストの健康や身体条件は事前に確認すべきだったと反省した一日でした。
まだまだ一杯失敗談がありますが、成長の肥やしと思っています。
3.ドイツ語ガイド
私は鉄鋼会社に技術屋として40年間勤務しました。仕事でもドイツはじめ色々な国の方々との出会いがあり、海外への興味はずっと抱いてきました。特にドイツは、仕事のつながりだけでなく、プライベートでも、豊かな自然、クラシック音楽、技術大国、国民性、戦後復興の共通感などの魅力にひかれ、若いころから好きな国の一つでした。
なんとかドイツ語の資格はとったものの、いざガイドするとなると、ハードルは高く簡単ではありませんでした。欧日ゼミ、現地ドイツ人との遠隔ビデオレッスン等で、必死で会話を覚え、ようやく独り立ちができるようになりました。
ところで世界の言語人口は、中国語が15億人でトップですが、英語の5億人、スペイン語の4億人に比べてみても、ドイツ語の1億人はかなりの数です。またドイツは旅行大国と言われるほど旅行好き国民で、特にクルーズ船が人気です。2024年年間訪問数は32万人ですが、その増加率は大きく、今後も訪日観光客が増える国の一つと言われておりドイツ語ガイドの需要は高まると思われます。

京都の自宅でお習字体験(ミュンヘンからのご家族)
4.強み
2019年に法律(通訳案内士法)が改正され、現在は資格(通訳案内士)が無くても、ガイド報酬を得ることが可能になりました。このような環境変化にあって、ガイドとしての自身の強みは一体何だろう、と考えることがあります。ガイド業は国際親善的な特徴がありますが、はやり基本的には報酬を得るお仕事です。強みや得意分野を持ち、顧客満足力や競争力を持つことは大変重要かと思われます。強みは、一夕一朝で体得することは難しいと思いますが、継続する中で、自分の得意分野が見えてくるはずです。生涯学習の機会が常にある感動あるお仕事だと思います。

浅草での茶道体験(スイスからの家族)
5.歌の絆
食事とともに芸術に関しては、大半のゲストは大きな関心をお持ちのようです。初めてお会いして気難しい方でも、お天気の話、富士山の話、新幹線、和食の話題などで会話の切り口が開きます。私の場合、相手の好みにもよりますが、音楽の話題を取り上げることがあります。お台場など広々した場所で、ゲストの国の歌を、さわりだけ歌うことがあります。ドイツ人なら、「ローレライ」、「野ばら」、「ちょうちょ」、英国系なら「ダニーボーイ」、イタリア人なら「チャオチャオバンビーナ」、「ボラーレ」など。歌詞の出だしだけでも心が開けます。また日本の歌、「ふるさと」や「すみだがわ」など口ずさむとゲストは聞いてくれます。寡黙だったドイツ人のおじいさんは目を細め、「日本の歌を初めて聞きましたよ」と満面の笑顔を見せてくれました。歌う事はゲストへのプレゼントかもしれません。今後はストリートピアノでゲストの皆さんへ弾き語りができたらと思っています。
6.対話
残念なことに現在の国際社会は対話を拒み、ますます人々の対立が深まっています。人と人、国と国、なぜお互い分かり合えないのか、悲しい気持ちになります。お互いへの理解は忍耐ある対話の実践でしか実現しません。一人のガイドの力は微力ですが、今の時代こそ重要な大きな意義があると思います。また海外から見た旅行先としての日本の魅力はますます高まっています。旅行者が夜でも歩ける安全な国、無くした物が出てくる国、美味しい食べ物や素晴らしい自然の国、交通の便利な国。たとえ円安が解消されても日本の人気は変わらずガイドの需要は高まると思います。
7.最後に
人生はあっという間、私はすでに75才の後期高齢者となりました。でも体力の許す限り、ガイドを続けたいと思っています。ガイド業は、出会う人に喜びを与え、自身も楽しめるやりがいのある魅力的な天職です。
以上、シルバーガイドのお話をお読み頂き有難うございました。

旅行エージェントとの現地交流会(オーストリア・リンツ)
(山名紳一郎 ドイツ語・英語 神奈川県)
