大型台風10号との遭遇
2019.9.15
ガイドという仕事に就くまで、天気を気にせずに暮らしていました。明日が晴れだろうが、雨だろうが、気にすることもないと考えていました。
が、お客様を連れて旅行をする立場となりました。今の私は、天気に一喜一憂し、左右され、支配されています。
なるべくツアー中は、穏やかな気温と、清々しい青空であって欲しいものですが、そうはいかないのが現実です。先月は、ロングツアー中に台風10号と遭遇しました。
私達グループは、京都を出発し、広島へとロングドライブをする日でした。
朝、恐る恐るホテルの窓のカーテンをめくります。どんなに風雨が吹き荒れているか・・・
穏やかです。不穏な色の厚い雲の合間に、青い空が覗いています。
テレビをつけてみます。眠っている間に、消えてしまったのではないか?
いえ、しっかりと存在しています。大きな円を日本地図上に描き、九州四国辺りに。
お客様に説明をします。
「台風が本日午後には上陸すること。大型であること。被害を想定して、山陽新幹線は運休していること。
だから、私達は、倉敷に立ち寄り、そこでウォーキングツアーと自由時間を取る予定だけれども、場合によっては変更し、広島へ直行する必要があること。
けれども、広島に着けば、お好み焼きディナーは予定通り可能なこと。」
皆、へーと驚きながらも、実感が沸かないという表情です。説明を聞きながら、バスの車窓に荒れ狂う雨風や、倒木や、吹き飛ぶ家々の屋根を見ているならともかく、昨日までと何一つ変わらない、京の街並みです。
こんな状況で、皆を納得させるのは、とても難しいです。
ドライバーさんは、倉敷などに寄り道をせず、高速道路が封鎖される前に広島に着きたいと言います。もっともです。
けれども、不可能でない限り、行程を守らなければいけないのも確かです。
スキップするなら、倉敷にはどうしてもいけないという理由を探さなければいけません。
大原美術館は開館を宣言しています。美観地区を歩くことはできるでしょう。けれどもお土産屋さんやレストランは閉店ではないでしょうか。
様子を確かめたいのですが、観光案内所はどこに電話をしても繋がりません。休館しているようです。
つまり・・・理由ができました。
倉敷では降りずに広島へ直行です。
一部区間、暴風と大雨に遭遇しましたが、問題なく、早めに広島へと到着しました。
そこで私達が見たのは、まるでゴーストタウンのように静まり返った街です。いつものエネルギッシュで賑やかな広島はどこへ?JRだけでなく市電の広電も運休。ショッピングセンターもデパートも、スターバックスも臨時休業です。
つくづく思いました。倉敷に立ち寄らなくてよかったと。
傘を差し、道を行くのは、私達のグループだけ。街を占拠したかのようでした。
ひろしまお好み物語駅前広場が、通常営業していてくれて本当によかったです。
ひたすらロングドライブに耐えたお客様方達にとっては、一日を取り返すことのできた、楽しいイベントとなりました。
雨にも風にも負けない、アクティブなお客様達でした。お好み焼きの後は、誰もいない横断歩道を渡りながら、大きな声で、I’m sing in the rain!と歌って踊ったのでした。
英語 水澤紀子