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通訳ガイド体験談-『新型コロナウィルスに負けるな!』〜新人ガイドの想い

2020.3.15

テレビを点ければ毎日ウィルス感染の報道。私の仕事もキャンセルが相次ぎ、心が折れそうな日々を過ごす中、今、改めて自分が通訳ガイドを目指そうと決めたあの日、そして今まで自分が通訳案内士として頑張ってきた日のことを思い返しています。

 

思えば2013年9月8日の早朝、2020オリンピック・パラリンピックの東京開催が決定した瞬間をTVで見ていた時「ああ、オリンピックに関わりたいな」と漠然と思い、初めて「通訳案内士」という仕事があることを知りました。ただ、その時はまだ夢のまた夢。どうやって勉強してよいのかもわからず、インターネットを検索しながら手探りの勉強が始まりました。

 

2016年2月の合格後すぐにJFGの東日本新人研修説明会に出席し、その年の新人研修に参加したのですが「通訳案内士」の仕事がどんなものかもわかっていなかったので、テキストとノートに必死でメモを取るのが精一杯。講師の先輩方のガイディングのまぶしかったこと! このときのテキストとノートは宝物です。そして、5日間の研修中にたくさんの方と知り合うこともできました。

 

当時、コーヒーチェーンでアルバイトしていたわたしは仕事をやめる決心がなく、旅行エージェントに履歴書を送ることしかできませんでした。当然何の音沙汰もありません。ただ、仕事がまったく来なくても毎月必ずスケジュールを提出し、下見や研修に行ったことを書いたメールを送り続けました。

 

そんな折、新人研修仲間から「仕事やめたの!」と聞きました。専業になったら通訳案内士の仕事が来るようになったそうです。背中を押され、思い切ってアルバイトをやめました。そしてすべて空いたスケジュール表を送り始め、ようやくエージェントから次第に仕事をいただけるようになりました。

 

2017年4月 通訳案内士初めてのお客様は都内観光のFITのお客様でした。何をどう話したのかよく覚えていませんが、ホテルに到着してツアー終了した時にお客様からの「とても楽しいツアーだったわ!」という一言は忘れられません。この年は春しか仕事がありませんでした。

 

2018年  2年目はバス団体のお仕事をいただけるようになりました。それまでは人前で話す経験はほぼゼロ。初めて40名ほどのお客様の前でマイクを握った時は手も足も声も震え、どうなることやら…と思いました。ところが、終わってみると「またガイドしたい!」と思ったのです。「さあ、今日はどんな楽しい一日を過ごさせてくれるの?」というお客様の好奇心いっぱいの視線、ツアー後の拍手。次のツアーが楽しみになりました。

 

ツアー当日を迎えるまで、毎回必死で準備をします。アサインを頂いたら必ず下見に行きます。例えば静岡県。それまで観光で1回しか行ったことがありませんでした。このときは「大手旅行会社のバスツアー(日本語、東京発着)」1回、「ガイド仲間との下見」2回、個人で新幹線とレンタカー 1回、計4回も下見に行きました。ツアーによっては間際までコースが決まらず、しかも立ち寄り箇所がたくさんあるからです。今はもっと効率的に下見できるようになりましたが、あのときは4回下見しても不安しかありませんでした。

 

バスのツアーには募集型ツアーやインセンティブツアーなどがあり、お客様の年齢・構成は様々です。お客様にご覧いただく資料もいろいろと工夫を重ね、今はA3の写真や絵、それをA4にしたものをそれぞれファイルに入れて用意しています。後部座席のお客様は前方でお見せするA3でもご覧になりにくいので、A4ファイルをお手元で見ていただけるようにお渡しして回していただきます。そして、最後の訪問地に着き、1日または数日を共に過ごしたお客様とお別れの時がきます。皆さんの「楽しかったわ!」「ありがとう」に緊張と疲れが吹き飛ぶ瞬間です。

 

2019年 3年目はFITツアーが70%、バスを利用するツアー30%くらいの割合でお仕事をいただけるようになりました。ラグビーワールドカップ関連のツアーでは東京と横浜で試合観戦し、その間に京都観光にお連れしました。ファミリーのグループツアーでは風鈴の絵付け体験などお子さんでも楽しめるアクティビティにお連れすることもあり、仕事の幅も広がってきた矢先…。

 

世界中で猛威をふるう新型コロナウィルスはガイドの仕事にも大変な脅威をもたらしました。キャンセルの知らせが次々と届き、一時は目の前が真っ暗に。人々の生活が安定し、平和な時に栄える産業なのだと痛感しました。でも今、「お・も・て・な・し」のスピーチから始まったわたしの通訳案内士の道を振り返り、「負けるわけにはいかない!」と自分に言い聞かせています。大変だけれど、素晴らしい仕事を選んで頑張ってきたのですから。だから、今は準備の時。そう思うことにしました。お客様に少しでもよい「おもてなし」を感じていただけるように勉強、下見に努めています。

 

また穏やかな日々が訪れ、世界の人々が「そうだ日本に行こう!」と思える時が来ることを、そして、また新しいお客様とお目にかかることができる日がきっと来ると信じています。

(中山エリ子)

  

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