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ガイドの目線でアニメを楽しむ

2021.5.15

コロナの話題がニュースで出始めた頃、20代の知り合いから『鬼滅の刃』というマンガがとても面白いと聞いた。アニメもあるとのことで、過去放送分を見始めると日々の視聴時間がどんどん長くなり、全ての放送回を見終わる頃には、その知り合いに次のおすすめを聞いていた。その後、世間がコロナ一色になり、おウチ時間が増えたことも相まって、アニメを見る機会が一気に増えた。作品自体が面白かったのはもちろんだが、海外にファンも多いというアニメがどんなものなのか?というガイドとしての興味があった。そして、昨年末の劇場版『鬼滅の刃』の大ヒット。国内においてもアニメの存在が大きく注目されることになった。

 

日本アニメの海外における人気を見てみると、その高さがうかがえる点がいくつかある。
1963年に日本最初のTVアニメ『鉄腕アトム』が放送されてから60年も経たないうちに、日本のアニメはどんどん世界へ拡散し、今や “anime” は日本のアニメーション作品を指す言葉になっている。
実際に、海外におけるアニメ人気の高まりは数値でも確認できる。ここ10年連続で市場を伸ばしている日本のアニメ産業において、2017年以降、海外売り上げが国内に迫り、市場の逆転が予測されるほどで、2019年の海外展開における国別の契約数順位は、1位アメリカ、2位韓国、3位台湾、4位カナダ、5位中国であり、地域別では、43.2%をアジア圏が占め、次いで欧州16.2%、北米11.4%となった*1。
また、内閣府の知的財産戦略推進事務局がクールジャパン戦略の中で示している調査結果では、「日本に興味を持ったきっかけは何か」という回答で「アニメ、マンガ、ゲーム」が最上位となっている*2。

 

日本のアニメがここまで海外に普及した理由は複数あるが、わたしが注目するのは、メディアとしての動画配信サービスだ。わたし自身もこのサービスを利用して過去の放送を一気見したわけだが、海外では日本で放送された直後に複数の言語に翻訳され配信されていたりする。ここ最近では、『呪術廻戦』(今年3月末に24話のTV放映が終了)や、3月末からシーズン5の放送が開始した『僕のヒーローアカデミア』がそうで、日本とほぼ同じタイミングで楽しむことができるのである。YouTubeには“『Jujutsu Kaisen』Reaction”、“『My Hero Academia』Reaction”と称した、海外ファンによるアニメ鑑賞中のリアクション(感想)動画がすぐにアップされ、視聴回数を稼ぐ程の人気ぶりとなっている。
そして、もう一つ注目すべき点はアニメの視聴者である。アニメの視聴者は、子供だけではない。日本でも大人がアニメを楽しむ傾向は以前から見られるが、海外にも大人のアニメファンはたくさんいる。現に先にあげたYouTube動画に出てくる出演者たちは、もう立派な大人に見てとれる。

 

3年前にノルウェーへ旅行した際、オスロの小さなホテルのフロントにいた大学生らしき男性が、わたしが日本人だと分かると「日本のアニメが好きで見ている。いつか日本に行ってみたい」と話しかけてきた。当時のわたしが、彼が口に出した作品を知っていたならもっと会話が弾んだだろうと今更ながら思う。きっと彼はいつか日本に来てくれるだろう。そして、彼と同じようにアニメで日本を知り、日本に行きたいと思っている人はたくさんいて、その数はこれからもっと増えていくのではないかと思う。

 

インターネットで簡単に情報が手に入る世の中になったとはいえ、遠く離れた地で、アニメというフィルターを通して見る日本は、彼らにはどんな風に映っているのだろう。町の風景や、時代、服装、食べ物、それら一つ一つが日本を伝える要素であると捉えるなら、それらがどんな風に描かれているかという視点でアニメを見るのも面白い。さらに、彼らが日本に来て何を見たいと思い、何に感動するのだろう。そんなことを考えると、ストーリーとはまた全く別の楽しみ方ができる。

 

ガイドを再開する目途はまだまだ立たないけれど、この1年でアニメの面白さを知ったわたしが、いつかゲストとアニメの話で盛り上がる日が来ることを想像すると、それもまた楽しみのひとつである。

 

【参考文献】
*1 一般社団法人日本動画協会「アニメ産業レポート2020サマリー版」
https://aja.gr.jp/download/anime-industry-report-2020-summary_jp-2(参照2021年4月20日)

 

*2 特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO) 「クールジャパンの再生産のための外国人意識調査(平成30年2月)」
https://www.cao.go.jp/cool_japan/report/pdf/vision_1.pdf(参照2021年4月20日)

(奥町 由花 英語)

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