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【通訳ガイドレポート11月号】東業研だより「コロナ禍の通訳案内士が読んだ本」

2021.11.15

なかなか収束しないコロナ禍ですが、多くのJFG組合員は海外からお客様が戻ってくる「その日」のために勉強を続けています。
お客様から質問されたときにもっと上手に答えたかったこと、理解を深めたかったテーマ、積んであった本…。
個人で、あるいはグループで、課題を設けて取り組む時間がたくさんできました。

 

東日本業務研修委員会は組合員のための研修会開催業務を担当していますが、昨年の春から約一年間、「東業研だより」を発行しました。
これは組合員専用メーリングリスト「知恵の輪」を通じて、ガイディングに役立ちそうな本やツールの紹介、トピックスの探し方などを発信し、
皆で情報交換しようというものです。
専門書と格闘する合間に、こんな本はいかが?と取り上げた約10冊の本のうちの一部をご紹介します。

 

〇 竹村公太郎『地形から見る日本史』
国土交通省で日本の社会インフラ造りに長年携わった著者が、専門分野の知識を生かしてユニークな切り口で日本史を語る。
例えば古代の日本で遷都が繰り返されたのは、エネルギー、すなわち木材の枯渇が主な原因。
建材や燃料として一人あたり1年に立木20本が必要だったとし、これに当時の人口をかけ合わせると、遷都前には周囲の山は伐採し尽くされて禿山になっていた。それで手つかずの森林を求めて遷都が繰り返された。家康が遠く関東の地に拠点を築いたのも、森林が目当てだった、云々。
学術的には異論があるかもしれないが、ひとつの視点として面白いし、ロングドライブで山や川が延々と続く道を行く時などにちょっと蘊蓄を語るにはとてもよい材料を提供してくれる。

 

〇 権代美重子『日本のお弁当文化 知恵と美意識の小宇宙』
日本のお弁当文化が海外でも注目を集めている。お客様の中には「日本のお弁当箱をお土産に買って帰りたい」という方も。
この本は農民や雑兵の携行食から現代のホカ弁、キャラ弁に至るまで、実に多彩なお弁当を紹介しつつ、その歴史や独特の伝統文化を語る。
底流にあるのは、「神への畏敬と感謝」。「神饌」と呼ばれるご馳走で神をもてなしたあと、お下がりを皆でいただくことによって神と一体化し、霊力を分けてもらう。これが直会【なおらい】で、宴会のルーツ。お弁当は広く一般化した「共食」の場面で大切な役割を果たしてきた。

 

〇 Min Jin Lee, Pachinko(邦訳:ミン・ジン・リー『パチンコ』)
お客様の中に熱心にパチンコ店に行きたがる方がいらしたので、理由を聞いたら紹介された小説。2017年全米図書賞最終候補作品となったベストセラーで、ドラマ化された。主人公は日韓併合後の釜山近郊の漁村出身。彼女を中心に、大阪の鶴橋、長野、横浜、ニューヨークへと舞台を移しながら展開する4代にわたるコリアン移民の物語。多くの読者が夢中になったのも、移民の国アメリカだからと思われる。

 

〇 Héctor García and Francesc Miralles, Ikigai :The Japanese Secret to a Long and Happy Life
(邦訳:エクトル・ガルシア、フランセスク・ミラージェス『外国人が見つけた長寿ニッポン幸せの秘密』)
以前ツアーリーダーと日本人の「生き甲斐」について語り合った際に何かうまく表現できず、もどかしい思いをしたので後日、本屋でこの本を手に取ってみた。外国人の目で分析しているのが面白い。

 

英語以外の多言語の組合員からの寄稿を一部ご紹介しますと、
〇 谷口ジロー『遥かな町へ』(フランス語ガイドより)
『孤独のグルメ』の原作画で有名な谷口ジローは、フランスで最も人気のある日本の漫画家で、現地で数々の大きな賞を受賞している。
その中でも最も読まれている作品。「マンガはただのティーンエイジャー向けの読み物ではなかった。日常生活の些細な事柄を芸術たらしめる、
それが可能だと気付かせてくれた。」と、高く評価されている。

 

〇 Pedro Arrupe, Yo viví la bomba atómica(スペイン語ガイドより)
スペイン、特にバスク地方から来られたお客様と広島に行くと、ペドロを知っているか?アルペ神父の修練院はどのへん?とたずねられることがある。バスク地方出身のアルペ神父は医師でもあり、原爆投下時に広島の長束修練院の院長を務めていた。原爆投下直後の広島の街で多くの人々の救助に当たり、助けをもとめてやってきた150人以上の負傷者を手厚く介護し、ほとんど全員が回復した。

 

その他に取り上げた本は、佐々木譲『天下城(上・下)』ピーター・タウンゼント『ナガサキの郵便配達』中川一徳『メディアの支配者』日本の仏研究会『イラストでわかる日本の仏さま』松本健一『砂の文明・石の文明・泥の文明』、等々。
これからもモチベーションを保ち、お客様が戻ってくる「その日」に備えたいと思います。

 

以上

(斧 恵子 英語、スペイン語)

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